人の生と死と救済の物語の終焉「エンマ」

2010年は本当に色んな漫画が終了してしまいましたね。挙げればキリがないですが、鋼の錬金術師惑星のさみだれ、MAJOR、講談社的には海皇紀が大きかったでしょうか。俺の中で最も影響が大きかった、動揺を誘ったのは、月刊少年ライバルで連載していた「エンマ」です。
ライバルの創刊から続いた傑作中の傑作もついに最終回、そして最後の単行本が発売されました。




やべー、可愛い。エンマ超可愛い。ふともも!おへそ!(控えめな)おっぱい!!最強コンボの完成です。

死者が大量に溢れ全てを裁ききれなくなった冥府。これは、冥府の閻魔王”無駄な殺生”を防ぐために遣わした紙人形であるエンマと呼ばれる少女の物語です。
エンマの目的は、多くの死者を生み出す元凶を殺し人々の命を救うこと。しかし、よほどの快楽殺人犯でなければそれなりの理由があるわけです。最初は淡々とこなしていた人を殺める仕事も、エンマにとっては心が苦しくなるものばかりとなっていきます。
例えば1人の人間を殺さなければ戦争が引き起こされるとしたら?この時、エンマはその1人の人間の方を必ず殺さなければなりません。閻魔王の紙人形として人の骨を抜き取る(=殺める)エンマ。中には笑いながらエンマの裁きを待つ者や、その人の死を嘆くものも出てきます。感情を持たないエンマからすれば最初は不思議な事柄でしかありませんでした。また、”閻魔王のお情け”と呼ばれる抜き取れない骨たち*1を見て、殺さなければいけない人物=完全な悪ではないと話が進むにつれ悩んでいきます。


そして最後の物語はエンマ自身のお話でした。




時も場所も越えてきたエンマですが、最後の場所は2010年の日本でした。そして骨を抜き取る相手は自分と瓜二つの少女・皆森絵麻。
実はエンマとはこの絵麻の魂を紙人形に入れた存在であり、その少女の物語を持ってエンマの物語も終了となります。絵麻は自分の母親の病気を治すため、高校生の身でありながらその対処法を見つけるのですが、それが実は病気以外の人にとっては非常に有害なものとなってしまいます。それを止めるためにやってきたエンマ。
これまでずっと人の心を学び、何が正しいのかを考えてきたエンマ。最後の最後に自分自身の本当の物語を知り、母親(=大切な人)にも出会い、これまで骨を抜いてきた人たちと同じ気持ちを知ります。


絵麻の骨を抜くということは、エンマにとっても大切な人を見殺しにしてしまうということ。無駄な殺生を止めるために大切な人を殺してしまうということ。


・・・・これって少年漫画なんだよ。





何て言えばいいんでしょうねぇ・・・。この漫画が少年漫画雑誌、特に講談社のターゲット層でも低い年齢層に読まれる雑誌に載っているという奇跡。俺はそれだけで嬉しい。もし自分の子供がこの漫画を読んでくれたら嬉しい。その実感を得たいので誰か俺と(ry


生だとか死だとかってのは、色んな考え方、いやもちろん宗教なんかに代表されるように様々な捉え方があるわけです。そのため、この漫画の終わり方にだって人それぞれの考え方が出るように思います。だけど、だからこそ、そんな大切なことを教える漫画が少年漫画雑誌に載っていたことが素晴らしいと思うわけです。
母親を助けたいと思い続けた絵麻を誇りに思いつつ、最後に骨を抜いたエンマを素晴らしいと思うわけです。





何かしらの業を背負って死んだとしても、それは裁かれ次の命へと変わっていきます。全ては繰り返す時間の中のほんの一瞬での話でしかない。消えては蘇る繰り返しの中で、ほんの一瞬を輝かせようと一生懸命生きる人たちばかりであります。

本当にこのエンマという作品が大好きでした。ライバルという雑誌にとっても大切な作品でした。正直、アニメ化して・・・ほしかった。
ただ、どんな作品であっても終わりは来ます。そして次が始まるのです。原作の土屋計先生、作画のののやまさき先生の次の作品も健やかなものであることを期待します。




ああ、本当に終わったんだなぁ・・・・くそう。



*1:その人を想う人の数=体に残った骨の数になる