闘う魂をFWと共に・・「コラソン」

塀内夏子先生のサッカー愛はハンパないなと思うわけです。Jドリームオフサイドといった作品、最近だと中澤佑二物語がありますが、力の入れ方が全然違いますよね。以前、塀内先生の凄さは「辛いって何か?」を問いかけてくることにあると書いたことがありますが(http://d.hatena.ne.jp/toldo13/20090831/p1)、90分もの間、様々な思いを胸にプレーするサッカーは特にその特徴が出やすいのかもしれません。
その作風の特徴を抜きにしても、ドーハの悲劇ジョホールバルの歓喜を筆頭に日本サッカーの分岐点を見てきた生粋のサッカー好きです。もしかすると、サッカー好きだからこその作風なのかもしれませんね。これだけサッカーに「気持ち」の部分を持ち込んです作品を描くのは塀内先生が一番だと思います。



そして、その集大成(?)とも言える作品「コラソン」がかなり面白い・・・・、いや、凄すぎです。

コラソン サッカー魂(1) (ヤンマガKCスペシャル)

コラソン サッカー魂(1) (ヤンマガKCスペシャル)

この作品の主人公・戌井凌駕はかなり荒くれ者のFWです。ラフプレーは当たり前、Jリーグを暴力事件で追放になったほどの猛者が主人公です。しかし、海外のリーグ(ほぼ2部)では得点王になっている、つまり得点力のあるFWなわけです。今の日本代表に最も必要だと思われる得点力を持つ主人公・・・・。塀内先生なりの日本代表へのエールだと思われます。

また、キャラクター以上に取り巻く状況が非常に面白かったりします。
・言葉に責任のない日本人監督
・自己保身しか考えない協会
・決定力も怖さも強さもないFW
・闘争心のないチーム

他にも色々ありますが、どこか日本を思わせる境遇に見えて仕方ありません。雑誌で読んだ時、塀内先生が皮肉っているんだと思ったんですけど、これが現状なんですよね・・・。ただ、そんな状況だからこそ、それを打破してほしいという塀内先生なりのエールなんですよ。


この作品のテーマはタイトルの通り「コラソン」です。日本語にすると心、気持ち、そして魂です。
戌井というキャラはラフプレーが多いですけど、魂を持った選手です。点を絶対に取ってやろうという魂を持った選手なのです。




いや、決して誰かと喧嘩して勝てということが言いたいわけじゃないんですよ。それだけの魂を持とうってことなんです。
そしてそれに呼応するかの様に失いかけていた魂を思い出す司令塔・中神。前のW杯での大惨敗に責任を感じ、怪我をしてまでも日本を支えようとする司令塔がこの漫画にもいます。特に新しく来た監督との会話が激アツです。塀内先生は腐ったキャラと本気の人間の目に差があるんですけど、中神、戌井、監督の目は本物ですよ。この3人によるそれぞれのやり取りは読んでて胸が熱くなります。


正直言って、今だからこそ日本代表に読んでほしい漫画です。わけの分からない指揮官は置いといて、日本代表代表の選手たちには自分たちはやれるんだというのを思い出してほしいんですよ。日本のサッカー漫画が誇る二大名台詞「ボールは友達」「サッカー好きか」と一緒に「コラソン」という言葉を持っていってほしいです。
とまぁ、色々と気持ちの部分を書いていますが、実際のところこの漫画のミソは得点能力のあるFWと有能な指揮官なんですけどね。大げさではないであろう協会の腐った立ち振る舞いを、どんどんぶち壊していく様は胸がすかっとします。


このベクトルのサッカー漫画こそ今のサッカー漫画界を牽引する力だと信じています。天使が舞い降りる必要なんてないんですよ。サッカーは楽しい・面白い、チームワークを大切に、そしてかっこいいプレーも必要です。ただ、勝ちたいという気持ちも重要ですよ。まぁ、OGと骨折はやりすぎですけどね(おい