「さよならしきゅう」を読んでみて


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元気がもらえるような闘病記

岡田有希先生というのは、講談社漫画を好きな人であればいつかは遭遇する漫画家さんだと思ってます。個人的には、「発掘マガジン野郎」や「0発屋」などのマガスペで一時期お馴染みだった連載や、月刊少年ライバルの最後にも載っていた「クソ猫シロー」などが思い浮かびます。まぁ、週マガ巻末漫画の「ルポ魂」で一番有名なったのでは?という気もしますが。
それ以外にも、週マガ55周年(だったかな?)記念に、昔の有名編集者さんを紹介する漫画を描いたり(←タイトルを忘れました。すみません。)。最近では、ヤンマガサードのネタ漫画を描いたりもしてますね。


一時期、S学館にも連載があったようですが、基本的には講談社のお犬ぞ!お犬さまであるぞ!!!わんわん!!←親近感を覚える
それなのに単行本がほとんど発売されていない、というかルポ系が多すぎて単行本にならないのが何とも言えません。まさかのマガジンドラゴン(一部で有名な消えた雑誌)でも、自分の持ち込み話を読み切りで描いてたりしてましたっけ。その時は、キャバ的なところでも働いたという苦労話も読める感動作でした。







そんな岡田先生が闘病記を描きました。タイトルは「さよならしきゅう」。もちろん自らの闘病記であり、子宮頸がんだったそうです。
正直言うと、ぴんときていません。読んでみましたが、おそらく一番大事な部分がぴんときていません。当然、病気への苦労、家族の心配、その他もろもろがギュッと詰まった本当にいい作品です。読み応えもバッチリで、涙なしには読めない作品。ただ、多分・・・・子宮頸がんというところにぴんと来ていないのかもしれません。
自分が女性でないから、結婚した家族がいないから、子供がいないから。色んな理由がある気はしますが、それって逆に言うと、女性、既婚者、子供がいる人がきっと読むべき作品なんじゃないかと思います。

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生きることを選ぶ

タイトルのとおり子宮を摘出したそうです。生きて、子供とのこれからを大切にしたいという結論です。当たり前ですが、摘出以降は子供が無理でしょうし、女性の更年期というお話が出てきています(←今の医学のおかげで無理のない対応ができたようです)。男性読者として、この点に気持ちを寄せられないことにもどかしさを感じます。
とはいえ、旦那さんの気持ちにはなれるでしょうか。旦那さん・・・・の正体については後述しますが、奥さんが先にいなくなるかもしれないことに対し、仕事を休んでまでも奥さんを支えようとします。わりと岡田先生のほうがしっかりしており、旦那さんの方はおっとりした印象を受けますが、全てを奥さんに任せているわけにはいかないと立ち上がっています。


作れなかった料理に奮闘し、子供の世話をして。週刊連載で毎日3時間睡眠みたいな生活をしていた旦那さんが奮闘しています。作中、岡田先生だけでなく、旦那さんの気持ちが描かれたり、岡田先生の手術中の話なども描かれており、旦那さんがこの作品の制作に一役買っているのかなとか思ってみたり。




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早くて良かった

最初はちょっとしたこと(←生理不順をちょっとしたと言っていいのかわかりません。すみません。)だったようですが、不安になって病院へ行ったら発覚したようです。漫画家さんの健康診断の話などは、常々、赤松先生が仰っていたように思います。健康診断で発覚というわけではありませんが、健康には気を付けておくに越したことはありません。
漫画家さんも人間です。大昔の漫画家さんのように命を燃やし尽くしてまでとは読者として思いません。生きて、真っ当に生活をして、漫画を描き続けてほしい。

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どんな反応をしますか?

この作品のとても良いところは、患者である岡田先生だけの心情を描いたものではなく、周囲の反応をとても大切にしているところ。お母さんを含めた家族としての反応、旦那さんや子供の反応、そして友人の反応。
自分の話となりますが、去年亡くなった友人に癌を打ち明けられた時の話を思い出しました。あの時の自分の反応はあれでよかったのか、もっと何か・・・・と今となっては思ったりもします。そんな場面に遭遇すると、相手がどう思ってしまうのか不安になりますね。一度考えてみるのもいいかもしれません。









この作品、努めて明るくして描いたのかなと思いました。本当の涙も一度くらいしか描かれていませんが、本当はそんなわけないだろうと思いました。まぁ、だからこそ、あの場面の涙にはくるものがありましたが・・・・。
それ以外には、医療側の皆さんが真実を常に言おうとしていること、悲観的になりがちな場所で慣れた対応をしていることが印象に残りました。この辺はわりとリアルだなあと思いました。いや、自分がそうなったことはないですが。
それと、転移がなく、闘病でのきっつい副作用が軽めに描かれていたなあというのも印象に残りました。岡田先生で同室だった方々は転移があったりで辛そうにしていたのも印象的です。ご本人は最後に、めぐまれていたと言っていましたが、その心境になるまで大変だったのだろうなあと思います。
とはいえ、要点をおさえ、読みやすさ抜群な内容にしているのは流石の一言です。






旦那さんについてですが、講談社で、週刊少年漫画で連載していて、アニメ化もしていて、ゆーじと呼ばれている方。この作品でもお母さんが旦那さんの作品を読んだりしていたりしますが、というか↑に紹介していますがダイヤのような旦那さんです。個人的には、もっと大々的に宣伝してもいいような気もしますが、その辺は色々とあるのかもしれません。
ただ、この旦那さんの作品の読者層である女性の方々にこそ読んでもらいたいような気がします。男の俺が言うのもなんですけど。「さよならしきゅう」を読んでみて、色んな感情が沸き起こりました。だからこそ宣伝したいです。
「さよならしきゅう」を読んでみて。