「RiN」がとてつもなく面白い件について




なかまひろ先生の「こんな編集者と寝てはいけない」。マンガボックスで連載していますが、タイトルがかなりキャッチーですよね。読みましたが、各話ごとにクズすぎる編集者が出てくるのが面白い。というか、これにGOが出されていることが驚き。漫画家さんが自分をさらけ出す作品、いわゆる漫画家漫画というものも増えてますが、編集者漫画というのもなかなか。いや、もちろん編集者漫画って過去にもありますけど、「この編集者がひどい」という内容で漫画をやるとは思いもしませんでしたよ。
ちなみに“寝てはいけない”とタイトルに書いてありますが、主人公の女性漫画家さんは・・・・(個々で確認してください)。1巻ではまだ連載をまともに獲得できていませんが、早く連載を勝ち取って「煽り文で目立ちすぎる編集」とかも取り上げればいいのに。なーんて。











こちらは完全に漫画家漫画ですが、月マガで連載中の「RiN」の11巻が出ました。もう最高に面白すぎです。ハロルド作石先生ならではの物語が描かれてますよ。ハロルド先生は一気に物語を爆発させるのが上手いと思うわけですけど、RiNでは10巻と今回の11巻で大爆発させてきました。というかようやく(?)漫画家としての物語が動いてきてますよ!!

 
漫画家人生を賭けて

漫画家を目指す伏見紀人の物語。ただし、漫画の作り方を知るような漫画ではありません。まぁ、10巻を超えてまだ連載を勝ち取っているわけでもないですし(読み切りまではいった)、前世?の因縁も含めたヒロイン・石堂凛との物語という側面もあるので、純粋な漫画家漫画とは言えないかもしれません。とはいえ、ハロルド作品らしい部分が随所にあるのはファンとしても非常に嬉しいところ。


姉ちゃんの願い

紀人の家では遺伝的に身体の筋肉がアレしていく病気にかかりやすいそうです。彼の母親はそれで動けなくなったまま亡くなっていますし、姉もまたその病に苦しんでいます。10巻までに色々と落ち込む出来事が重なり、漫画という道じゃなくても・・・・と思っていた紀人にもう一度漫画家人生を歩ませたのが、そんな姉の存在。
実を言うと、紀人自身も病気になる可能性があるわけですよ。体が動かない=漫画が描けない、そんな可能性を持ったまま夢を追いかける紀人。原稿を完成させたのに(担当編集の不手際?で)雑誌に載らない、同期は連載を勝ち取り出世街道まっしぐら。その上、自分もいつか漫画が描けなくなるかもしれないという三重苦。
だからこそ、漫画を描けなくなる時が来るかもしれないからこそ、夢を諦めそうになっているからこそ、背中を押した姉。自分が一人っ子なので分からないところもありますけど、姉って、姉弟っていいですね。もう少し言うと、姉ちゃん自身も打ちひしがれる思いになっているというか、身体も動かなくなり始めてますし、彼氏と別れる?ことにもなってますし、元気づけられる側は姉ちゃんだと思うんですけどね。それでも弟の夢を後押ししてくれた姉。



でまぁ、ここをターニングポイントとして紀人の運命も変わり始めていったように思います。





恩師との出会い

紀人が昔から好きだったという漫画家、水野亨。作中にも何度か名前が出てきていますし、水野作品の名前がいくつも出てきてます。紀人がお世話になっている雜誌トーラスでも看板漫画家の一人として活躍中。そんな水野先生の仕事場で住み込みとしてアシスタントをすることになります。担当編集からは募集を締め切ったと言われたにも係わらず、キャラじゃなく無理を押し通した紀人。
そこで絵の描き方をイチからアシスタントの先輩たちに学ぶ〜というのが10巻まで。おっと、水野組が大ピンチとなったところを紀人が辛うじて救ったという話も忘れてはいけませんね。
いい恩師、いい仲間に出会えた、そこで成長していく自分が嬉しくなっていくわけです。もちろん残り少ないかもしれない時間の中で漫画に関われている、いつか描けなくなるかもしれない可能性を知りつつ腕を動かすわけです。アシスタント時間以外は勉強。もちろんアシスタント時間も勉強。そこでどっぷりと漫画に浸る時間を得るわけで。



アシスタントの先輩たちからは努力を認められ、信頼されて仕事を任されるまでになってます。ただし、水野先生からはさっさと卒業した方がいいとも言われています。多分、紀人にとって最上の言葉を水野先生から頂いてますし、とにかく、とにかく、紀人は少しずつですが人に認められる存在になりつつあるわけですよ。10巻かけて!!!
もちろん紀人自身の実力不足も否めませんが、どう考えても運命の神さまを掴み損ねていることが多々あるので・・・・ようやくというか何というか。でもそれって、BECKみたいでしょ?






新しい編集長

姉に背中を押され、恩師と先輩に実力を磨いてもらい、そこから連載に向けて動き始めます。担当編集がいかにクソだったかは置いといて、編集長が偶然にも紀人に目をつけてくれたのはなかなかラッキーだったかも?


神様が読んだ時、君がどう考えて生きたかわかるような
人が読んだ時、君という人間の全てがわかるよな
そういう漫画に読者は心を動かされる


ちょっと変わり者だと言われる編集長だそうですが、言ってることは一つとして間違っていないと思いますし、信念を持った人なのだというのが分かる場面。紀人にエロい漫画ばかり描かせていた無能編集とは違いますよ。まぁ、こうなったのも紀人が無能編集の言葉を聞かなかったこと、操り人形ではなく自分のやりたい漫画を描いたからなわけですけど。もちろん水野先生のアドバイスもありましたし、そこまで運命を動かしてくれたのは姉という・・・・。
余談ですが、紀人がどんな漫画を描いたかは11巻で読めます。深い内容の作品なので、紀人がどこまでやれるか楽しみですよ。こういった作中漫画をしっかりと読めるのは「RiN」の良いところですよねぇ。
もっと余談ですが、RiNが掲載されている月刊少年マガジン。現在の編集長は林田さん、林田慎一郎さん。週マガのクロマティ高校にいたのは・・・・林田慎二郎。いや、そんなまさか。どこかで見ましたが林田編集長の自画像はクロマティ林田だったのでまぁ、確定だとは思います。あの林田が・・・・。









武藤さんとの関係

この場面がとても好き。
武藤編集というか、無能編集と言いたくなることが多い彼。11巻では、この場面以降わりと有能っぽいところを見ることができます。そもそも紀人にエロを描かせていた張本人。自分の意のままにならない新人への態度がなんとも言えませんでしたし、いやーな感じの編集様の権化だとすら思ってました。でも、編集長が色々と語ったあと、紀人は武藤さんに「どうしましょう?」って顔をするんですよね。本当にちょっとした場面なんですが、紀人が頼れる数少ない人であるという信頼?に似た感情があって・・・・。武藤さんの「しょうがない」って諦めた顔もなんか好き。ここから良い関係が見られるわけです。
編集長も武藤さんも紀人を認めていく・・・・という流れ。やっぱりこういう作品だと、“認められる”ってのは重要な要素ですよね。


紀人の漫画は・・・・

さて、紀人の漫画「リメンバー」。設定の細かいところは置いておいて、とりあえず足が動かなくなった主人公が夢の中で大立ち回りを繰り広げる作品になっています。それって、姉ちゃんのことを考えた設定ですよね。身体の不自由な人が・・・・と言っていますが、そのまんま姉ちゃん、そして自分に向けた設定でしょう。今の紀人だからこそ描ける、描きたい漫画だったのかなと思います。





神様が読んだ時、君がどう考えて生きたかわかるような
人が読んだ時、君という人間の全てがわかるよな
そういう漫画に読者は心を動かされる




良い漫画になりそうです。
ここまで連載までの道のりが長い紀人でしたが、ようやく連載編が読めそうですね。連載を勝ち取ったら勝ち取ったで難題ばかりかと思いますが、なんとか乗り切ってもらいたいものです。
ちなみにですが、紀人はこれまで可愛い女の子を描けと言われてきていましたが、美人とそうでない人を結構な差をつけて描いています。それってハロルド先生と一緒だな〜とか思いつつ、ある種のポリシーがあるのかも?と思ってみたり。そのあたりは、もしかするとハロルド先生の漫画家としての物語が入っているのかもしれません。ちなみに水野先生のアシスタントのモチーフは、ハロルド先生のアシスタントさんですよね。



やっぱり漫画家としての物語が盛り上がってくると、読者的にも楽しいな〜と感じた10巻&11巻。水野先生が女には気をつけろと言っていたのが気になりますが・・・・。あと、ハロルド先生は毒島作品のキャラに対して厳しすぎる気がします。まぁ、いつものことではありますが。
凛ちゃんとの夢のお話、トーラスを巡る物語、色々と話題が散りばめられていて楽しいことになっていきそうです。次巻も楽しみ!!