挑むという熱量「ポンチョ」



ポンチョ2巻

ヤンマガで連載中の野球漫画は2つあります。1つは甲子園を目指す真っ黒球児を描いた「砂の栄冠」。そしてもう1つはバッティングセンターから始まった「ポンチョ」という作品。前者は既に巻数も多く出ており、内容が内容だけにかなり有名ですね。一方のポンチョは、高校野球としては大きな目標があるわけでもない作品です。しかし、これが熱い。かなり熱い。



強打者ポンチョ

京曜高校という普通の高校を舞台に二人の男が出会います。一人は犬のような顔をした大江慎弥、通称ポンチョ。犬っぽい顔をしているからといって、犬童貞男と関係はありません(多分)。
驚くべきことにポンチョという男、かなりの強打者なのです。ただ、野球ではなくバッティングセンターでのお話ですが・・・。バッティングセンター王を見たポンチョが、バッティングを練習して強打者としての才能を開眼させます。まぁ、ストレートにしか対応できないんですけどね。



優秀投手不破圭輔

そしてもう一人が不破圭輔という元投手。高校に入る前はシニアの選手として相当有名だったそうです。しかし、ある日を境に投手を辞めていました。本当は武総高校という強豪に入る予定だったらしいんですけどね・・・。
そんな不破を投手としてもう一度動かしたのが、ポンチョでした。素人だと思ってなめていたら、なんとポンチョに超特大のホームランを打たれてしまいます。プライドがボロボロになるかと思いきや、そこから武総高校を倒すという目標に向けて全てが動き始めます。



・・・ということで、武総高校と試合することになります。
全てが動き出すのはいいんですが、京曜高校は素人ばかり。ましてやブルペンDQNに乗っ取られている。そんな問題ばかりでありながらも、新しいチームメイトが増えながら、不破の投手能力とポンチョのバッティング能力という2点突破を試みます。もちろん1ヶ月や2ヶ月の練習で倒せる相手でもないのですが・・・。


ここで不破という投手について補足しておきます。元々は武総高校系列のシニアチームにいました。その上にある武総高校では毎年特待生として5人しか選んでいませんでした。不破はその特待生に選ばれなかったのです。選ばれなかったその日に不破は・・・野球をやめました。そう聞くと、たいしたことない奴だなぁと思うじゃないですか。ただ、実際は違ったそうです。



肩がぶっ壊れている

ある日シニアチームにやってきた箭内という男に特待生の座を奪われそうになります。実は箭内がバッティングセンター王だったりするんですが、彼がシニアチームの中心の座を不破から奪ってしまうわけです。箭内という男は相当の天才でした。そうなると不破は頑張るしかないわけです。肩を故障していると知っても投げ続けるわけです。


そうなればもちろん・・・





男泣き

作品を読んでいけば分かりますが、不破は泣くような男ではありません。肩が痛くても痛いと言う男ではありません。そんな男が最後の最後で弱音を言います。その時には、チームの中心も箭内が陣取り、不破自身も投げれるような肩ではなくなったわけです。それが野球をやめてしまった真相でした。



ここでどうしても言いたいのは、単なる野球漫画と思ってほしくないこと。
肩がぶっ壊れるまで投げた男が、肩を壊すほどに野球を愛していた男が、その野球をあきらめた男が、もう一度投げようとした。そこが重要なんです。当初は野球をやめた男としてしか見られていませんでした。そこからポンチョに出会い、再び投げ始めます。ぶっちゃけまだ肩は痛いようです。というか完治していません。それなのに人一倍練習をして、武総高校に挑もうとしています。それがもう熱い。ものすごく熱い。



やり残したことを・・・

トップにいた男が後ろ指を指されながら野球をやめました。ポンチョにホームランを打たれました。そしてボロッボロのチームで強豪に挑もうとしています。これが不破という男です。一度の挫折だけでは折れない魂を持っている男。捨てきれない野球への愛を持つ男。


一言であきらめないと言いますが、そのあきらめないを体現している作品です。そして、それが簡単ではないことを見せられます。泥にまみれた元エースが、肩をぶっ壊してでもまだ投げ続けることに目を奪われてしまいます。



これまで野球漫画という文化が膨大に広がってきたことを考えると、テーマとしてはそれほど目新しいとは思いません。しかし、こういう作品が常にあって然るべきだとも思っています。あと、バッセンから始まる作品というのがちょっと楽しいですね。たまに行きますが、ポンチョのように打てませんね。ストレス発散にはかなりいいと思いますよ、バッセン。オススメです。
次の3巻からついに武総高校との試合になります。そのあたりがどう描かれるか。ポンチョは打てるのか。不破は通用するのか。とてもとても楽しみな作品です。