四季賞ポータブルもついに20冊目突破!そんな記念すべき四季賞2010秋

年4回のお楽しみでもある四季賞もついに20冊目に到達しました。これだけ揃ってくるとそれはそれで壮観ですね。時々読み直すと結構新鮮な気持ちになります。また、受賞者が後々連載を持ったときに読み返すと、成長(?)が見て取れて別の楽しみができます。これがタダで読めるんだからありがたい話です。





○四季大賞
記念すべき20作目の四季大賞は「平成デカダンス」を描いた、みやざき明日香先生が受賞されました。

太宰治を窓際で読みながらデカダンスに憧れる少女・吉屋。そんな吉屋に声をかける将来のミュージシャン・大槻くん。この作品には登場人物はこの2人しかいません。高校からの出会い、そして「デカダンに退廃に突き進もうとする吉屋に振り回される大槻くん」といった流れが終始続いていきます。




文学とかよくわからないのでデカダンスと言われてもあまりピンと来ないのですが、とりあえずこの作品は痛い。いい意味で痛いです。そしてそれがちょっと気持ち良いくらいの作品です。
まず「誰よりも美しく滅びたいのよ・・・」という吉屋の言葉からして素敵すぎます。で、それに呼応する大槻くんがちょっとヘタレ気味なのがいいです。大槻くんは何度も吉屋に婚約指輪を渡そうとするのですが、そんな現実なんてお構いなしに吉屋は退廃さを求めていきます。もしかして大槻くんってデカダンスに呼応してなかったんじゃないか、でも好きな女性と一緒にいたいから言っちゃったんじゃないかと思うわけで。
そんな2人ですが、死のうと思ったらお金持ちになったり、死のうと思ったら偉業を達成したり・・・。実は読んでて笑ってしまう作品だなと最後に気付き、「シリアスな笑い」だったなと理解します。

そして、何よりこの作品が17ページしかないことに驚きました。四季賞や特別賞とかを含めても最少数ページ数だったような気がします。2010夏で特別賞を取ったライカライカという作品が24ページだったのですが、その時ですら短いと思いました。そこからさらに少ないページ数とか・・・。そのおかげで、今回の四季賞ポータブルはとってもスリムです。





四季賞
四季賞は「ONE HAND SHOOT」の秀河憲伸先生でした。

二次オタの男子バスケ部員・中田くんに、バスケのワンハンドシュートを教えてもらうことになった女バスキャプテンの栗先輩。決して二次オタがハアハア言いながら教える話ではなく、栗先輩が中田くんのキレイなシュートフォームに目をつけて(無理矢理)教えてもらうことになっただけです。
あまり中田くんがオタっぽくない気もしますが、ミオというキャラを愛しているようです。どことなくベースを弾きそうな絵をしていたような気もします。
物語としてはわりとシンプルで、いやな男から身を守るためにワンハンドシュートを覚えようとする栗先輩がいて、その栗先輩を最後に助ける中田くん。助けた後には、栗先輩と中田くんがいい感じになる・・・という読みやすい内容のものでした。
あまり文句をつけるようなことはしたくありませんけど、栗先輩はお釈迦様と言われるほど唯我独尊なんですよ。それなのにちょっとデレ過ぎじゃないか?と思うところがちらほらありました。あとは絵をもうちょっと・・・という気もします。


ただ、俺はそれでもこの作品を四季賞以上にしてあげたい。というか「二の腕ぷにぷに」がある時点で四季賞以上は確定でした。




あー俺もぷにぷにしてーよおおおおおおお。
某伝説の恋愛漫画(週マガ連載)でも、二の腕=おっぱいという定説を伝えていました。あえておっぱいという直接的表現を使わず、二の腕をぷにぷにしたわけです。この表現方法はこれからも愛されるべきものです。ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに。

上で絵の話を描きましたが、むしろそんなことを気にする必要のないことはこれまでの四季賞を見れば明らかです。それよりもキャラとストーリーがあることの方が重要だと思うのです。うまいわけではありませんが、栗先輩は可愛い。目が素敵。四季賞的にはそれだけで十分だなあと思います。逆にここから絵を磨いてくれば栗先輩とか最強です。是非是非、今後連載を持ってほしいなぁと思います。





○特別賞
特別賞は「コケノシマ」の撫ヶ田薺先生が受賞されました。




まさに「絵を見よ!」という作品でした。物語もさることながら、絵の描き込みがハンパないです。この作品を一体どれだけの期間をかけて描いたのかがとても気になります。それとあわせて、連載を持った場合にこのレベルでやれるのかも・・・。
人を切り続けていたら自分の剣が魔物になり、そしてその魔物と化した剣の呪いを解くために、さらに魔物を切り続けることになった男のお話。作者曰く「ソードファンタジー」だそうです。
また、いつかは海内で映画化されるような漫画を描きたいそうです。本当にそこまでいくかは分かりませんが、「壮大な」という言葉が似合うような重厚な作品ができれば・・・。某YAに休載の多い作品が1つありますが、あの作品と同じレベルのものを是非講談社で読みたいです。




薄いながらも記念すべき20冊目となった今回の四季賞。やはり四季賞は面白いなと改めて思います。どの程度の方々が連載を勝ち取るか分かりませんが、次の連載化こそがスタートだと思いますので・・・ホント期待したいものです。
四季賞はきっとあと何十年も続きながら良作家を輩出し続けると思うんですよね。そう考えるだけでワクワクしてきます。また、3ヵ月後が楽しみです。