緊張感の持続が生む爆発的スリル「誘爆発作」

毎月の発売状況を見ると講談社作品の単行本が確実に一番多いです。講談社系を名乗ってはいるものの、これだけ多いと本当に毎月の出費が辛いですね。あ〜あ、講談社系やめようかな(←!?
まぁ、そんな冗談は置いといて、最近のラインナップを見るに「ネメシス」作品が出始めましたね。多種多様な雑誌を扱う講談社にあってもネメシスはかなりの異端です。1、4、7、10月という季刊であり、実はアンソロ扱いの雑誌になっています。母体のシリウス自体が稀有な存在なのに、それよりも稀有。描いている作家さんたちもなかなか灰汁の強いメンバーばかり。実に素敵です。

自らを「怒りんぼ別冊」と呼び、シリウスに比べても対象の年齢層が高めな作品が多いのも特徴。そんなネメシスにあって個人的に好きなのが「誘爆発作」という作品です。



誘爆発作の第1巻発売

沙村広明先生も帯文を書いてくれていますが、普通の人がこの帯文をじっくりと読んだだけで「面白そう」だと感じるのではないでしょうか。かなり煽りに煽っています。

現代の漫画はマニア化が進み、一般人が読んでピンと来るものが少ない上、出版点数が多く、何を読んでいいか、わかりにくくなっています。そのためランキングや話題性といった指標ばかり頼りがちになり、未知の傑作や自分だけの名作と、出会いづらくなっています。誘爆発作は、漫画離れをした人でも漫画マニアでも、読めば楽しめる良質のドラマや映画のような作品です。漫画へのワクワク感を取り戻していただけるよう、誘爆発作をお役立てください。

帯文の一部抜粋です。この他にも「読書上の注意」や「効能・効果」なんてのまで書いてあります。いくらなんでも煽りすぎじゃない・・・?と心配になってしまうレベルなんですが、いやいや中身も全然負けてません。



心臓の繋がった二人

夜な夜な不思議な声に悩まされる久我真咲。どこから聞こえるのか、何を言っているのか・・・。そして同じ現象を離れた土地の武藤という老人が一人。こちらは女性の声が聞こえてくるという・・・。ここまで書けば当たり前に分かりますが、二人はある一定の時間だけお互いの声を聞くことができます。驚いたことに、二人は声を聞くことができるだけでなく、実は二人の心臓が繋がってしまう現象まで起きていました。



武藤の心臓はいつ止まってもおかしくない状況で、ニトログリセリンを常用しているほど。そんな状況下で二人の心臓が繋がるということは、武藤の心臓が止まる=真咲の心臓も止まるということ。逆もまたしかりではありますが、武藤の方が危ないのも事実。


どうして声が聞こえるのか、どうして心臓までも繋がったのか。特に、全く関係のないところで自分の心臓が止まるかもしれないという状況に追い込まれた真咲にとっては・・・。




・・・とまぁ、ここまでが前段です。この漫画の面白さは、こんな異常な状態の中で起きるサスペンス性にあります。
二人の声と心臓という共通項の中で、唯一真咲だけが別に感じる現象。それは不意に訪れる”女性が惨殺されている現場”を夢で見てしまうというもの。そして、過去に行方不明となった娘を持つ武藤・・・。



復讐王に俺はなる

「えっ!?この後どうなるの???」という続きが気になる作品になっています。
作者の岡村星先生はこれがデビュー作となるそうですが、ネメシスもなかなか凄い駒を持っていたなぁ・・・。確かにシリウスではちょっと毛色の違う作品なだけに、ネメシスで正解だと思ってみたり。シリウスさんたちは某イベントでもよく出張編集部を出していて好印象だったりしますが、そのへんから発掘したのかな??よく分かりませんが、絵もストーリーによくマッチしていてGJの一言です。
いや、本当に絵から伝わる部分は多いですね。心臓が止まりそうになる描写、女性が殺されるシーン、真咲が見る夢の数々。全てが惹きこまれます。それでいて設定とストーリーがいい。今年中に2巻が出るそうなのでそれまで楽しみにしていたいと思います。あと、ネタバレも色々と省いた(・・・はず)なので、是非是非読んでみて下さい。