夢と現実の狭間で・・・「宇宙兄弟」



ネクタイを締めるのは、仕事が無事に終わった後に”緩める”ためだ

ピコ△!!ピコ△!!出てきた頃のピコは、飲んだ暮れのやる気なし男でした。しかし、アスキャン(特に六太)と係わりあう中で徐々にその本性が見えてきましたね。今では職人気質の頼れるおっさんに昇格しました。おめでとう、ピコはスーツの似合う男に進化したぞ。
まぁ、日々人の帰還にあわせてビシッとスーツを着てきたピコ。打ち上げるのも戻ってくるのも命がけになるのが宇宙のお仕事です。発射での事故といえばチャレンジャー号でしょうか。技術者としての倫理問題ではよく取り上げられるものですが、打ち上げる側の姿勢が非常に問われたものでした。一方で、戻ってくる時に重要なのがパラシュートなわけですが、日々人帰還での担当をしたピコにとっては一安心でしょうね。
打ち上げてもらう人間ばかりがフォーカスされる同作品。しかし、それを支える側の気持ちを考えるというのも非常に重要です。テクニカルな部分で絶対に妥協しない姿勢、果報を寝て待つしかない状況・・・。そんな部分をピコの登場によって描けたのはすごく良かったと思います。夢を追いかける人間とそれを支える人間と。未知への挑戦というのは、そんな人たち全員が重要なわけです。


そして、打ち上げてもらう側の六太たちが参加したカムバックコンペ。六太のスポンジタイヤという発想からうまくいくかも?と思われていましたが、前日の雨によって一転ピンチになってしまいます。そこはまた新しい発想から切り抜けるんですけど、六太の止まった事象を動かす能力には驚かされますね。そこがまた面白いんですが・・・。コンペの順番が「6番」になって、いい数字だ(=六太の6)と皆を和ませるのも六太ならではの能力・・・なんだよね?


1位を取ることはできませんでしたが、色んな苦難を乗り越えてなかなかの成績を収めることができました。ちなみに1位になったのは民間からの参加者・・・しかも日本人。実はなんと福田さんのチームでした。



福田さんの宇宙への夢は終わらない


また、それ以外にも宇宙という舞台で六太たちの他に夢を追い続ける人がいます。



六太と日々人の良心・シャロン

シャロンの目標は、よりクリアに宇宙を見るため月に望遠鏡を造ること。お金を気にする話ではなく、どんな世界が広がっているかを知りたいという皆の気持ちを実現したいという夢。夢は人を動かす力だと思います。お金では決まるものじゃないということをとても訴えかけてきます。もちろん実現するための力は資本です。それでも、動くためには、動かすためには夢という部分が欠かせません。

宇宙兄弟の持つ”夢を叶えよう”という力のある作風が好きです。六太たちの細かな描写による部分も、面白さを作るうえで重要ですが、全ての根幹はこの動こうとする意志です。それが堪らなくいい。


しかし、そんな夢追い人の一人であるシャロンに病魔が襲います。現代ではどこまで回復するのか不明な病気・ALS。せりかの父親も罹った病気であり、そこからせりかの新しい人生が始まっています。
偶然も必然も全てごちゃまぜにしたような漫画ですが、むしろ、せりかがいたことによってシャロンの病気が分かったことは好意的に見るべきかなと思っています。何も分からないままよりいいですしね・・・。そして、そんな状況でも乗り越えられる力が六太たちにあると信じたい。



まぁ、雑誌派なので次がどうなるか・・・というのは分かっているのですが、この後のシャロンと六太のやり取りがいい。現在12巻まで出ていますが、各巻で出てきた心に残る一言があったかと思います。印象が強く強く残る言葉たち。それが・・・待ってるよ。


それぞれが見る夢と、シャロンと六太、日々人、せりかが直面する現実。まだまだ見逃せませんな。