小さな世界の大きなフィールド「さよならフットボール」

サッカーほど多くの人が簡単に、且つ、どんな国の人であっても交流が深められるスポーツはないですよね。たった1つのボールと場所があればそこからがサッカーです。そこには人種も、国も、言葉も、それこそ年齢や性別だって問いません。街中でサッカーを楽しむ人、スタジアムで応援する人、大舞台で活躍する人、そんな人たちが集まってサッカーが成り立っていくわけです。

日本というサッカー後進国はサッカー漫画先進国でもあります。それは漫画文化が異常なほどに発達しているからに違いありませんが、そんな代名詞として真っ先に挙げられるのが「キャプテン翼」です。『ボールは友達』という強烈なインパクトを残すメッセージ性、サッカーが巻き起こす奇跡の数々。日本はもとより、世界中にサッカーの素晴らしさを再認識させました。
そして今では、監督を主人公としたチームをテーマに描くジャイアントキリングが大人気です。
勝手なイメージですが、意外とジャイキリは海外受けしないのでは??と思っています。ジャイキリのようなチームやサポーターの話はむしろ海外では日常であり、キャプ翼のようにあっと驚かせる話ではない分・・・・と感じていますが、実際は不明です。逆にそういった文化がJリーグで根付いていなかった日本にとってはかなり新鮮に感じるのかも・・・と思ってみたり。


話はそれてしまいましたが「サッカーは楽しい!」 全てはこの言葉に尽きると思います。
それには舞台の大きさなんて関係ありません。自分の取り巻く環境が盛り上がればそれでいいんだと思います。そして、それを象徴するかのような傑作サッカー漫画がさよならフットボールです。




女の子・・・だけど、サッカーのテクニックは一流な恩田希。女であることを理由に試合に出れない日々が続きますが、ある時その鬱憤が堪り過ぎて弟に成り代わって出場してしまいます。敵チームのフィジカルゴリゴリなサッカーに体当たりしていくも、それに勝てるわけもなく・・・。自身のサッカー、華麗なサッカーでチームを引っ張っていきます。



ありえるわけがないと思う人がいるかもしれません。*1しかし、サッカーなら不思議じゃないと思います。超絶なスピードが要求されるわけでもなく、フィジカルだけでできるものでもなく、自分のサッカーを見つけた人が輝けるスポーツなんですから。もちろん全てを兼ね備えている選手が理想ですけど、それすらも打ち破るチーム戦術だってあります。




サッカーは輝いたもの勝ちです。
サッカー漫画の1つに「U-31」という漫画があるんですが、その中で「エンジョイフッチボール」と主人公に語りかけるブラジル人選手が出てくるんですよ。すごく重要なシーンで今でも印象に残っています。また、ジャイキリでもタッツが言っていますが、サッカーを楽しめるかどうかが重要です。そして、その楽しめた人が輝くわけです。輝くためには楽しむ必要があり、それが人を惹き付けていきます。


W杯でもCLでもない小さな小さな世界の1つの物語ですが、彼女を取り巻く物語としてはとてつもなく大きな話だったわけです。これはいつでも起きうるサッカーの物語です。最初にも書きましたが、プレーする人や見る人たちによってフットボールは構成されるんです。



結構2巻で終わることに残念な感想を見かけるんですが、俺はここで終わってよかったと思いますよ。やっぱり公式戦に出続けるのは不可能ですし、女子サッカーまでいくとテーマが変わってしまいます。それこそ引き伸ばしと言われかねませんよね。人気がある時に続きが読みたいと思わせてくれるきれいな終わり方をする漫画は良作です。
さよならフットボールというちょっと強烈なタイトルですが、全然さよならしていません。男子サッカーができなくなるという意味ではさよならですが、このタイトルの中にはむしろ「さよならなんてしねーよ」という強い意志が感じられます。小さな世界の話ではありますが、こんなサッカー漫画もアリだなと本当に思いました。むしろ新鮮です。サッカー漫画やサッカーをやるのが楽しいと思ってる人は是非どうぞ。

*1:当たり前だけど男子の公式戦に女子は出れないよ