君が何者かになれた日「アニメタ!」


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「アニメタ!」はいいものだ。そんなことを第1話からずっと言い続けているような気がします。





この作品が2015年の月刊モーニング・ツー8月号から連載された頃からずーっと言い続けてます。アニメが好きだからこの作品が好きなのかもしれません。主人公が魅力的だから好きなのかもしれません。登場キャラがアニメに対して愛溢れているから好きなのかもしれません。まぁ、とにかく好きだとしか言いようがありません。


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好きで選んだ仕事で死ねるなら

作品としては、主人公の真田幸(通称:ユキムラ)による『ゼロから始めるアニメーター仕事』といったもの。なーんもなかった学生時代に、たまたま見たアニメ「王立少女パンナコッタ」(←作中劇)。パンナコッタに心を奪われ、パンナコッタを作った制作会社にアニメーターとして就職するお話・・・・です。
連載開始時期がちょうど白い箱が話題になった頃だったかと思います。あちらはアニメの制作を、こちらはアニメーターの仕事を中心に描いています。



愛があれば何でもできるか。
愛があれば技術がなくてもアニメーターとして生きていけるか。
愛は地球を救うか分からないけれど、アニメ愛を全力投球してアニメ制作している奴らがいるんだぞ、って作品だと思ってます。現状の業界の厳しさも描きつつ、能力様々な人たちもおりつつ、その上で主人公の成長を描いた傑作です。














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愛を見つけた日

漫画でもアニメでも、どこかの時点で「好きな物」を見つけたタイミングがあったのだと思います。『オタクは気付いたらなってるんだ』とは某班目さんのお言葉。ただ、そうであってもオタクになる前のどこかで「好きな物」に出会ったタイミングがあるはず。
主人公のユキムラは、パンナコッタとの出会いがそのタイミングでした。そこから、キャラや物語のみならず、映像の方へ興味が向いていくことに。普通であれば、好きなものを仕事にすることがない人ばかりだと思います。しかし、愛を持ったまま、ユキムラは好きな物を仕事にしました。





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アニメは愛でできてんだよ

で、ユキムラを採用したのが、この九条監督。パンナコッタを作った天才監督となんやかんやある人であり、とにかくアニメ愛の塊みたいな人。そして、何を思ったか、アニメに命をかけられるだけの馬鹿を採用しようとした結果、ユキムラを採用。・・・・なお、ユキムラは作画素人。本当に採用してよかったんですか、監督!?
ただまぁ、ユキムラのちょっとした才能を見抜いた人でもあるわけで。愛ある馬鹿のちょっとした才能に賭けてみたことで、ユキムラの就職が叶ったということになります。
ちなみに九条監督自身がユキムラを指導するようなことはあまりありません。そのあたりは、アニメの制作会社として真っ当に・・・・いや、真っ当じゃないかもしれませんが、ユキムラ育成計画を実施しています。スポコン・アニメーター物語とはよく言ったものです。

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アニメの作り方

そんなわけで、アニメーター制作のお仕事漫画になります。単行本にはアニメの作り方~なんてものも載ってます。
作品を読んでいると、作者の花村ヤソ先生がやたらとアニメ制作に詳しいな~と思うことが多いです。それもそのはず、花村ヤソ先生は元アニメーターだそうで。携わった作品の偉大なこと偉大なこと(ヱヴァとか)。さすがに自分が経験してきたからか、かなりリアルなお話が描かれています。作者の経験が物語の説得力につながるという珍しい例かもしれません。←そうでもないか?







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現状を知っているからこそ

クールジャパンとは何なのかと思うほどに、現場は大変なことになっているようで。
作中では、頭を抱えたくなるほどにユキムラの給料がやばいことになっていることが描かれ、それは業界全体での問題だと示唆されている場面があります。というか、ユキムラに誰か救援物資を与えてあげてほしい・・・・。まぁ、九条監督もそれは理解しており、「好きでやっている仕事でも見合った額を」と言っています。これを理解していないのって経産省くらいじゃないか?
なんか怨念?がこもっているような気もするので、花村先生とかどういう生活だったのでしょうね?

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何者かになれた日

さて、この作品の宣伝を見ていると、元アニメーターが描くアニメーター漫画、業界困窮物語、お仕事漫画、そんな言葉で飾られています。
でも、作品としての面白さの本質ってそこではなくて、普通に花村ヤソ先生が描くストーリーが良いと思うわけですよ。なーんにも技術を持っていなかった少女が、愛を武器に突っ走っていく。業界のイロハを知らず、アニメの作り方を知らず、動画としての画の作り方も知らず。それでも愛と努力と根性で、好きなアニメに向かうわけです。
そして、自分の作った画がアニメとしてTVに放映される。





愛しか持ってなかった少女が、自らの仕事で何かを残せた。





偉業を成し遂げたわけでもないですが、ユキムラは自分の仕事を目にすることで、アニメーターとしての一歩を踏みしめることになります。それに近い感覚って、きっと誰しもが一度は噛みしめたことがあるのではないでしょうか。その感覚を共有できる漫画、何者かになれた日を共感できる漫画になっている・・・・と思います。やりがいってこういうことなのかもしれませんね。









社畜漫画ではあるなと思いますが、社畜を絶賛するような漫画ではありません(アニメーター社畜問題は業界の問題です)。仕事をしていれば辛いことだってある。それをどう乗り切るかを描いた漫画だと思います。
アニメを作る人たちそれぞれの物語も描かれつつ、新人たちの葛藤があったり、家族とのお話もあったり。それでいて、アニメの作り方を知ることができるような漫画です。ちなみに、ユキムラと対比されるような新人が二人ほどいますが、こいつらとの関係も見もの。こんな奴もいるんだろうなぁ・・・・という感情がわくかもしれません。
熱い漫画だと思います。面白さが複雑に絡みすぎていて、伝えきれていないような気もしますが、超オススメです!!