スマッシュ!(11) (講談社コミックス)

スマッシュ!(11) (講談社コミックス)

スポーツ漫画には2種類あります。
一つはそのスポーツの「リアル」を描くもの。もう一つは「トンデモ」なプレーの連続で作品を湧かせるもの。
スマッシュ!は明らかに前者です。ただ、その前者でありながら一線を隔す存在でもあります。
それは青春からの成長を描いていること―。
11巻は主人公たちのバドの成長を描きながら、且つ、学生生活の充実ぶりを描いています。
それが決して味付け程度に終わらず、漫画の魅力として、人間の成長として描いている点が素晴らしかったです。



久しぶりにスマッシュ!の感想を書くので改めてこの漫画の魅力を少し書いておきますか。
スポーツ漫画というジャンルは元々感動を作りやすいジャンルです。
北京五輪然り、感動を生み出す、ドラマティックに選手を映し出す物語が多いです。
「努力する人間は素敵である」ということを読者に伝えてくれます。
スマッシュ!も例に漏れず、その流れを踏襲しており、
そんな中で咲先生が描く「確かな成長」に惹き付けられるわけで。
バドミントンは地道な努力が必要であり、翔太たちは切磋琢磨しながら確実にステップアップしています。
咲先生があまりにもバドが好きすぎるせいか、試合の一つ一つが丁寧であり、そこも魅力の一つですね。


また、スポーツ漫画としての熱さも忘れていません。
翔太の先輩である吉川元部長の話は熱さ無しには語れませんよ。そこらへんは・・・読め!お前ら読め!!


もう一つ挙げるべき最大の魅力が「バドは楽しいから面白い」ということ。
俺自身、バドを経験したことはありませんが、登場人物たちからそれがひしひしと伝わってきます。
経験したことがなくても擬似的に体験できる(気持ちになれる)のが漫画の良さですが、
「バドって楽しいよね」という気分にさせてくれます。
意外とこの疑似体験をさせてくれるスポーツ漫画が少ないような気がしますが、
一緒に喜んだり悲しんだりできるのがスマッシュ!という漫画です。


面白さは人それぞれですからスマッシュ!を面白いと断言できる人ばかりではないかもしれません。
それでもどんな作品よりも「楽しんでる」気持ちは伝わるはずです。これは断言できます。



以上が俺が考えるこの漫画の魅力です。恋愛パート?優飛が最近出てこないんだからそこを語っても・・・・。
(実際は語りたりません。咲先生が重要視しているダブルスの良さ、吉川と美都の魅力、翔太の成長記録、優飛という神格化されたヒロインと身近な女の子としての美羽、咲先生が1コマに込め続ける一瞬の輝き、アイドル選手の扱い・・・等々。挙げればまだ出続けるけど、挙げれば挙げるほど自分の首を絞めそうで怖いwww)


というわけで、最初の文の方に戻りますが、11巻では学生生活が重点的に描かれています。
10巻を越える作品の中ではどこかにターニングポイントたる話が出てきます。
俺はこの11巻こそがその新しい流れを生み出した巻だと思っています。
それはこの11巻だけを読んでは感じない、ず〜っとスマッシュ!を読み続けてきたスマッシャーだからこそ分かる領域かもしれません。



まずは翔太について。
10巻の終わりからナショナルメンバーに選ばれて沢本や古賀と戦います。
バドは楽しい。楽しいから大好き。という考えが根本にあった翔太のバドも
優飛に追いつくためのバドにシフト量が多くなってきています。
沢本戦、古賀戦を死に物狂いで勝ったところに新しい翔太が見えてきました。
これだけ成長してきているのに、まだ追いつかないなんてどれだけ優飛は凄いんだとも思わされますが・・・。
強くなった余裕からくるのか、新翔太が自分の学校生活で周りに与える影響も相当大きいわけで。
先輩からも後輩からも好かれ追い掛け回され(?)ますが、
翔太という存在から出てくるオーラは頼もしさに変わっています。
初期の頃のふわふわした感じから、人間としての成長が振る舞いの全てから伝わってきます。
もちろん翔太自身が強くなったこともありますが、
俺は8巻の吉川先輩から言われた「お前に一番期待してる」の言葉がきっかけになっていると信じています。
100話目以降から学生パートが増えたこともあり、翔太の先輩としての行動が見れます。
スポーツ漫画だからといってスポーツだけで成長するわけではありません。
日常生活の1秒1秒で成長していくんです。

ここから伸び続ける翔太が楽しみで仕方がありません。


一方、ダブルスのパートナーながら翔太に差をつけられている亜南。
プライドが高く、色んな人間とも対立していますが、この11巻最大の見せ場はやはり亜南パートでした。
「オレ アイツ(美羽)のこと好きなんだ」はスマッシュ!史上最大の名シーンでした。
この前に美羽からキスの確約をもらったこともあり割とハイだったこともあるんでしょうが、
週マガを読んでたときに思わず「亜南よく言った!!!!」と叫びましたよ。
男というのは単純な生き物で、好きな女の子からちょっとしたきっかけをもらうだけで嬉しいものなんですよ。
まぁ、まさか亜南にとってキスがキーポイントになるとは思いもしませんでしたが・・・。
翔太はバドパートで、亜南が恋愛パートとは・・・・。
あと、亜南は第2の吉川部長になれると思っています。最近、「責任感」が芽生えてきたような気がします。
予選1回戦でピンチになった時の頼もしさときたらもう素敵でした。オレの背中について来い!!!!
責任感については後輩女子にバドミントンについて教える姿からもちらほら見えてきました。
教え方が上手いとはお世辞にも言えませんが、決して見捨てないあたりはらしいなぁ・・・と。
この責任感が、まさかキッスが引き金になっているだなんて思いもしませんでしたけどね。


やっぱり100話目以降ですわ。100話目以降最高。超最高。


翔太や亜南を含めた周り全員にそれなりの見せ場が設けてある11巻。
いいとこなしなシーンが多かった美羽もバドパートでの見せ場がありますよ〜。珍しく輝いていて超必見です。
あわせて、亜南にしばかれている(?)後輩女子の琴美が今後の楽しみの一つとしてあります。ちょい期待。




11巻ではやまとの羽根時代を知る人間からすれば最高に嬉しい特典がありました。
一つは10巻から出てきている早坂先輩が見れること。またあの泣き顔を見れるとは思いもしませんでした。
もう一つは描き下ろしで撫子が登場していることです。
撫子に関しては半分諦めていたんですが、まさかまさかの登場にビックリでした。
是非とも大和たちでスマッシュ!外伝をやってほしいなぁ。マガスペでできませんかね???
頑張れ咲先生!!!



妥協せずに成長し続ける主マッシュ!という作品がこれからも楽しみになった最新刊でした。
スマッシャーの皆さんなら共感してくれる、読んだことのない人間なら気にはかけてくれると嬉しいです。




とりあえず、この文章を読んだ人は「優飛」という文字を10回書いてから人生を楽しんでください。