そうだミュージカルを見よう!「ダーティー・クライスト・スーパースター・第1巻」



映像化不可避

西山優里子先生がモーニングにやって来ました。タイトルは「ダーティー・クライスト・スーパースター」。タイトルを見ただけで分かりますが、ミュージカル系作品です。元ネタはジーザス・クライスト・スーパースターというミュージカル。ジーザス・クライストとはイエス・キリストのこと。そのイエスがダーティーとは・・・・?


その男、凶暴につき

ハデスという男、天才である。歌や演技の天才である。ただし、性格は非常に・・・・悪い。そんな男の物語です。
主人公のハデスは、ニューヨークで活躍するミュージカルアクターとしてスターの地位にまで上りつめました。見たもの全てが涙するほどの演技を見せ、彼が演じた「ジーザス」はまるで本物のイエスが降臨したかのように錯覚させるほど。
しかし、日本に戻ってきているハデスは、ほぼ浮浪者。女を口説いては、その日その日の暮らしをしていました。やり口はかなりゲスですが、それを可能にできるだけの演技力(と歌)があるということです。特に、歌での口説き落としは作中でもかなり見ものだと思います。


俺は役者だぞ

彼は超超超超一流のミュージカルアクターです。だからこそ神にもなれます。彼が本気になれば、喧嘩中の人だって怒りを収めるでしょう。泣いている人を笑顔にすることもできるでしょう。もしかしたら戦争だって止めることが出来るかもしれません。それだけの神がかり的な実力を持っています。ただし、人々は彼を神と錯覚し、彼は自分が演者だということを理解しています。この差、実は大きいものだったりします。まぁ、気付かれなければ何でもアリなのでしょうが。
そんな彼がある日、謎の神父によりハデスの娘という少女と対面させられます。ハデスの娘は父であるハデスを恨んでいました。それは、もちろんハデスの人間性もありますし、母と娘で非常に苦労したという部分もあります。しかし、その娘もまた・・・・音楽の道を進んでしました。そして、神父に彼女を助けてあげてほしいと言われます。


ここからハデスによるレッスン(のようなもの)が始まるわけでして。



どんな感情でも、どんな役でも

娘の名前はリサと言いますが、彼女は弱小劇団に所属し、ミュージカルの主人公を演じていました(演目はサウンド・オブ・ミュージック)。ハデスはリサの足りないものを早々に見つけます。リサは“愛するフリ”ができても“愛する演技”が出来ない。リサ曰く「(ハデスへの)憎しみの気持ちしか持ち合わせていないから」。
そんなリサに対し、「どんな感情でも、どんな役でも血ヘド吐いて歌うのがアクターである」と言い切るハデス。人殺しの役のために人殺しをするわけがない、妊婦の役のために妊娠する必要もない。それが役作りであり、演技だと言い切ります。


この場面、無茶を言っているようで、実は演技として当然のことを言っています(多分)。ハデスという男は、自分の利益にならないことはしません。もちろん娘だからといって、父親としての優しさを見せるわけでもありません。純粋に音楽に心酔しているハデスが、娘であるリサに何らかの才能を見出した可能性の方が高いかも??もしくは、リサの母親とはかなり色々あって、その娘だからこそ手を貸したという流れだと個人的には面白いと思っています。






親子共演

リサは確かにハデスを恨んでいた。ただし、ハデスの演者としての魅力や能力は認めていた。いや、認めざるを得なかった。それだけの説得力がハデスにはありました。結果として、リサを数段レベルアップさせることになりますが、やはり普通の父娘のやり取りとはちょっと違うな〜と思う方向へ・・・・。基本、歌えば何でも解決!な状態ではあるので、歌っているうちに解決したような、してないような。とりあえず歌って素晴らしいよね!!(←重要
昔から西山先生の音描写は好きでした。ハーレムビートのリズム描写、ドラボの歌描写。個人的に好きな描写だったわけですが、そのあたりは今でも健在でした。特に今回のミュージカルをテーマにした作品では、演劇と歌を足し合わせる必要があるため、歌描写の中に感情が込めやすいんですよね。ハデスという男のオンオフが激しいからこそ、際立つ設定でもあります。
しかしまぁ、本当に「俺の歌を聴けー!!」な主人公ですよ。もしかしたら熱気バサラと気が合うかもしれません(これは本当)。ただ、どうしていちいち胸元をさらけ出そうとするのかは謎ですが(←作者の趣味





・・・・という、このハデスの娘編がモーニングで短期集中連載として描かれました。西山先生がミュージカルが好きなのがよく分かる集中連載だったのが印象的です。途中途中で、実際のミュージカルの歌が使われてるんですけど、歌のテーマとハデスたちの場面とがリンクしていることからも窺えます。本当は細かく説明してもいいんですが、それってほぼ、ミュージカルの説明なんですよね、あはは。裏を返せば、ミュージカルが好きであればより楽しめるのではないかと思います。



劇団を作りたいのでは疑惑

1巻ではそんな読み切り話の後、ハデスの物語はとある大学へと移っていきます。そこでもまた音に困る人を助ける流れになるのは、お約束になりそう(←天使にラブソングを風ですな
そんな中、どうもハデスは自分の劇団を作りたいから今の浮浪者をやっているのでは?という予想が出ていました。意外と外れてはいないようで、ハデスが求める声に出合えてないのが問題なご様子。しかし、大学でその声に出合うわけですが・・・・というところで1巻終了。うーん続きが気になりますね。
ちょいと余談。大学編では、大学のグリークラブを指導することになります。そのクラブのダメダメさ加減を表すのに、天使にラブソングを(のミュージカルオリジナル曲である)Raise Your Voiceが用いられています。タイトルの通り、声を上げて〜ということなんですが、天使にラブソングをの映画を一度でも見たことがあればわかるかと思います。あれです。最初は声が出てない&ヘタ→上手くなる&声が出るを暗示していると思われます。グリークラブがダメダメなのは読めばわかるのですが、そんな彼らがRaise Your Voiceを歌っていたというだけで、実は全て表していたというのが、俺はとても好きです。
そうそう。そんな天使にラブソングを、もとい正式にはシスターアクトの舞台が今年あります。http://www.tohostage.com/sister_act/が詳しいですが、映画にはないRaise Your Voiceの楽曲があったりするので、初見でも映画視聴済みでも楽しめると思います。来月の8日からチケット予約開始だそうです。気になった方は是非是非。




四季にも行こう!

徐々に徐々に漫画とはずれていきますが、この漫画の巻末で劇団四季の広告が載っていました。というか、それも当然の話でして。作中のミュージカル演目の多くが、劇団四季系のものでした。“系”と言うには色々と語弊があるかもしれませんけど、日本ではそもそもミュージカル作品を輸入していることが多く、歌詞の和訳は色々とあるんですよ。で、作中の歌詞の多くが劇団四季版ですよ〜という注釈がされていたので、広告も当然なのだろうな・・・・というお話。
またしても余談ですが、実は自分は四季会員でもあります。最近はヅカに流れつつありますが(←


あー・・・・・・、だからアレです、アレ。四季のミュージカルが取り上げられているからこそ、この作品が大好きなんですよ。何にも知らない人が読んでわからない歌パートも、頭のなかに歌が流れてくる。その強みがどうしてもあるから、この作品をプッシュプッシュなのです。そこはね、もう否定できません。好きです。めっちゃ好きです。
ミュージカルとか知らんがなと言われたら、ぶっちゃけごめんなさいです。でも、ちょっとでもミュージカルに興味があるという人は、きっと楽しい作品です。できれば、この作品を通してミュージカルを好きになる人が増えますよーに。みんな!ミュージカルを見に行こうぜ!!


・・・・という文章を、つべでRaise Your Voiceを検索して聞きながら書いてました。




宝塚系の作品があるかと思いきや、こっちにまで手を出すモーニングさんさすがやで。