音が描く青春合唱物語「少年ノート」

あまりテレビを見ることもなくなりましたが、それでも印象に残るCMってありますよね。最近気になってるのは消臭力のCMに出てくる外国の少年。




ショーシューリーキー。・・・何か力強いですよね。まぁ、この少年もいつかは声変わりをして、また違った味のある音を響かせてくれるでしょう。問題があるとすれば日本のテレビに出てくる可能性が低いことくらいでしょうか。
そう、男の子は声変わりをするんですよ。昔は高音を響かせていた自慢の喉も、いつの間にか低い声に変わっていきます。今では昔の声がどんなだったか忘れてしまいましたが、まるで天使の歌声だったような、なかったような。ただ、そんな声変わりも男の子にとっては成長の証です。




モーニング・ツーで連載している「少年ノート」は、そんな成長を迎える前の少年による”合唱”物語。とりあえず・・・ものすんごく面白いです。予想を超えて面白い作品です。これは是非読んでほしい。



男子がソプラノ?

作者は某誌で「隠の王」を描いた鎌谷悠希先生。どうも少年合唱が好きらしいです。好きなことを描くというのも大切ですよね。まさかのモーニング・ツーですが・・・。
感受性が豊かで、色んなところから音を見つけては楽しめる主人公の少年・蒼井由多香(あおいゆたか)。朝の音?宇宙の音?そんな人には捉えられない音を探しては笑顔になる少年です。

もちろん聞いて楽しむだけではなく、歌う方も一級品。声変わりする前の少年が持つ、独特の高音ボイスが空に響き渡ります。女性では分からないかもしれませんが、男という生き物だって昔は本当にソプラノだって大丈夫だったんですよ。それがいつの間にか低くなっていきます。ゆたかという少年も、いつしか消えていくであろう高音ボイスをどこまで保てるかという問題に直面するはずです。その声が天使の歌声であればなおさらです。



天使のように純粋に歌っている・・・

音を耳から自分の体へ入れることも、音を口から出すことも、音に関わるそれら全てを楽しめるのがゆたかです。
ゆたかが見た聞いた自然の風景たちが、ゆたかの口から音となって表現されます。見た景色が音になる。その音がまた漫画の絵として表現される。その音を楽しむ表情がある。それを見て喜べる読者がいる。不思議な感覚ではありますが、音を楽しめる漫画です。




音が描かれる漫画

ゆたかが少年ノートという作品の中で、最初に自分のノートに記したのは入学前に聞いた合唱部による音。その中の描写では、うまいヘタ、キレイ雑といったものは読み取れません。
唯一分かるのは、ゆたかが感じた「みんなで歌う」ことへの憧れ。そして、自分のソプラノを混ぜた合唱をしたいという願望です。それら全てが混ざって、ゆたかは目から涙をこぼしました。とても感受性の強い少年なのです。





感動?男子ソプラノ?・・・痛いよ

もちろん歌の申し子としてのゆたかを快く思っていない部員もいます。特に冬子という女の子が厳しい言葉をぶつけます。まぁ、冬子の場合だと優しさの裏返しですが・・・。ツンデレですよ、ツンデレ



ゆたかを中心とした物語ではありますが、部活動という枠の中で物語が進みます。主流じゃない部活の漫画って大好きなんですよ。例えばちはやふるのような”かるた”に取り組む部活動漫画もそうですよね。サッカーや野球だけじゃない、こんなとこでも熱く燃えてる集団がいるんだって分かると嬉しくなります。
部活動という自分を発揮する場所の中で1人1人がどうやって主張していくか。作者のさじ加減ではありますけども、たった数年間しかない青春にどれだけ本気になれるか。何が起こせるのか。



だから合唱は楽しい

みんなで1つの音をつくる。これが合唱の良さでしょうか。
週マガで以前やっていた「ブラボー」というブラバン漫画がありましたけど、何だかんだでやっぱり好きでした。1人じゃなくて、皆がいないと作り出せない音を表現する。そのために、喧嘩したり笑いあったり支えあったり。色んなものが混ざってようやく音を作れるわけで。


結局は”ゆたか”という個性に戻ってくる作品ですが、それだけではない作品でもあります。
例えばゆたかを見て本気になった部長。しかし、顧問と対立しており、指導やピアノまで兼ねて大変な思いをしています。皆が作る音の中に自分の音が入らない。歌いたい。歌いたいけど、皆を引っ張るために押し殺す部分もある。これも1つの物語。
例えばゆたかを見て天使のようだと表現した町屋さん。町屋さんの深い歌声を、森の中の呼ぶ声だとゆたかは表現しています。時折、中二病を発祥しますが、合唱部の中心人物としてゆたかをどう見守ろうとしているのか注目してしまいます。


ゆたかの音を聞く才能。ゆたかが感じたものを音として表現する稀有な能力。音を作り出す合唱部という魅力。そして、それぞれが持つ青春としての物語。本当に色んなものが混ざり合っています。しかし、たった1巻の中にそれが全て読み取れるだけの作品でもあります。冒頭から言っていますが、この漫画はすごい。また1つ素敵な作品に出会えたなぁと嬉しくなります。超オススメ作品です。




やっぱりゆたかが声変わりするところまで描くんだろうなぁ・・・。