君との絆はずっと消えない「サヤビト・8巻」



剣と絆の物語、堂々完結!

サヤビトが・・・サヤビトが終わってしまいました。good!アフタヌーン(以下、グフタ)の3号目から連載している作品ですけど、全連載陣の中で何気に作者の伊咲ウタ先生が多分一番絵を描いているはず。群を抜いたレベルの画力なのにも関わらず、パワフルにパワフルに描き続けました。伊咲先生は絵を描くのが好きなんだなぁと思わされる部分でもあります。そもそもグフタレーベルで5巻以上出ている作品があるのか無いのかって状態なのに、8巻て。8巻目までやってるって。すごいな、おい。
おお振りモモカンは三橋についてあれだけ投げるのが好きな子はなかなかいないと言ってました。俺も伊咲先生くらい描くのが好きな先生はなかなか見ないと思ってます。俺自身は絵心無し男なので、サヤビトくらいガリガリ描けたら楽しいだろうなぁといつも思ってました。まぁ何が言いたいかというと、すげーぜ伊咲先生!ってことです。


主人公のリヴィア

8巻のこのコマが好きなんですよね。リヴィアがふつくしいです。8巻冒頭、最終決戦前夜の時点でリヴィアは左目が見えていません。元々見えていなかったらしいですが、リヴィアの中にいたアンが彼女の左目を司っていたらしいです。まぁ、アンは・・・ほんのちょっと前に暴走したところを倒しちゃいましたからね。アンの消滅と共に視力が落ちてしまいました。


少し遅れましたがサヤビトという作品について。
サヤビト(=人造人間)は人によって使役される兵器。見た目も、考えることも、食べ物も全く人間と同じ。ただ、アド(=主人)の命令に逆らえないように造られた存在。何故存在するのか。どんな扱われ方をしてきたのか。全ての行動はサヤビト自身が望んだものなのか。人のようで人でない。そんなサヤビトという存在について描いた作品だからこそ“絆の物語”と呼ばれています。
さて、そんなサヤビトの中でも主人公のリヴィアは特異体質を持つ存在だったりします。倒したサヤビトの記憶、記録を自身の体に取り込んでいく、ちょっとイビツな存在です(アンというサヤビトがリヴィアの中にいたのも同じ理由)。そして、全くリヴィアと同じ存在のサヤビトがまた一人・・・



狂った王子

アドのゴドフレードからはトーヴェ(殺す子)と呼ばれていましたが、本当はテオと言う名のサヤビトです。リヴィアと同じく、殺しに殺したサヤビトが体内に取り込まれ、誰が自分で自分が誰なのか分からなくなってます。あと、ゴドフレードによるおクスリでちょっとイカれてます。ゴドフレードはリヴィアの元アド。色々あってリヴィアはゴドフレードを憎んでいます。まぁ、頭がイカれてるアドなので何があったかはお察し。



1〜7巻までサヤビトの悲喜こもごもな物語を描き、リヴィアの半生、そして現在の性格触られまくりのテオが描かれてます。それはもうじっくり、じっくりと描かれています。1〜7巻まで絆の物語でした。そして最終8巻は絆を繋ぐ物語となっています。
ここで色々とおさらい。サヤビトは国の武力として重要な戦力であること。一括管理してる教会が腐り、サヤビト制度が危ういこと。ゴドフレードはサヤビトを使い何かの実験をしていたこと。リヴィアのアドであるサヤビトのクイファが色々と知ってそうなこと。・・・っていっぱい情報があるおかげでまとめきれませんね。というわけで、物語はクライマックスへ。





漏れだす情報たち

テオに勝利したリヴィア。もちろんゴドフレードによっていじられた体は、テオとテオが溜め込んだサヤビト情報を吸い込み始めます・・・が、器?としてのリヴィアが耐え切れず、リヴィア内のサヤビト情報が漏れ出します。そしてここから急展開も急展開。超弩級の急展開を迎えます。


実はサヤビトは20光年離れたところからやってきたんやで

ファッ!?
リヴィアの中が暴走し、色々と大変になったところでクイファが登場。サヤビトとは何か。クイファという存在について語ってくれています。
そもそもサヤビトは宇宙からやって来たそうです。この作品、ファンタジーかと思いきやSFの要素を持ってきてたという・・・。何とこれを残り2話という状態でぶっ込んできてたりするんですね〜。さすがにこれには驚かされました。風呂敷閉じ始めたら、横にもう一つの風呂敷を置き始めたようなものですからね。雑誌掲載時にはさすがにぶっ飛びました。サヤビト最終巻を理解するにはこのあたりが非常に困難なものとなっているかもしれません。というわけで、ざっくりとまとめておきます。


サヤビトはわざと人間に似せているそうで、サヤビトが生活し得たもの見たものを(死んだ時に)回収するのがクイファという存在。本当は宇宙へ定期的に連絡する予定だったけど、何故か連絡が取れず。とりあえず自分の考えで動き回り300年が経過していたそうな・・・。最初騙されていたのですが、クイファは特別サヤビトというわけではなかったそうです。つまり、サヤビト同士の契約をしていたわけではなく、クイファという大元とリヴィアが契約していたということです。



君が好きだよ

先述したとおりクイファは情報を集めてます。しかし、ゴドフレードの策略により“壊れた”データが送り込まれていました。そのためクイファは疲弊し、例えばリヴィアの壊れたデータがくるだけで終わる状態だったそうです。
でまぁ、なんやかんやあって(←!?)クイファは消えてしまいます。その後、覚悟を決めたリヴィアが暴走を止める・・・というか暴走したサヤビトデータを体内に吸収します。リヴィアと出会った多くのサヤビトは自ら消えることを望み(=リヴィアの中から消える)ますが、それ以外の多くはリヴィアの中に残ったまま、自分の望みが叶うまで残り続けます。





リヴィアの人生は3つに分けられるのかもしれません。実験体として扱われた時期。クイファと出会い喧嘩しながら仲良く暮らしてた時期。そして最終巻で迎えたクイファとの別れ以降の時期。クイファが消え、多くの死んだサヤビトが体の中にいる生活をリヴィアは迎えます。また、少しずつ中のサヤビトの願いをかなえつつ消滅させる毎日を暮していくわけで・・・。



クイファが戻ってきた!?

・・・と思いきや、最後の最後に戻ってきたクイファ。消えたはずのクイファが戻ってきて一緒に暮らす生活は描かれませんが、きっと楽しく暮らしてそうな気はします。




こう言ってはなんですが、最終巻にはかなりの情報量が詰め込まれていたように思います。リヴィア、クイファも真っ青な量ですww 説明してませんけどクイファが消えたためかサヤビトとアドの契約も無効になってたりします。何度も何度も読んで、話を自分の中に溶かし込まないと全部は理解できないかもしれません。これが良いか悪いかなんて話は別で、そういう作品を楽しめたというのがとても大切だと思います。
最終巻までずっとサヤビトという存在を描いてきましたが、最後はクイファとリヴィアという二人の絆が描かれました。実はそれほど多く描かれてなかったんですよね(イメージです)。クイファの謎の体調不良や壊れてたリヴィアの剣、リヴィア不殺の誓いといったように、色々と伏線はありましたが・・・。ちょっと風呂敷の話をしましたが、自分の中では大き目の段ボールを持って来て梱包完了!くらいの纏まり方はしたな〜と思ってます。

さて、講談社で美麗ファンタジーを読みたいという人がいれば、俺はきっとこの作品を推すでしょう。多少難解な部分もありましたけど、伊咲先生の世界観を共有するのが楽しい作品だったと思います。もちろん伊咲先生にはまだまだ頑張ってもらいたいな〜と思ってますよ。四季大賞を受賞した時のような現代風?の作品も面白そうだな〜とか思ってみたり?なんにせよ戻ってくることを祈ってます。とても素敵な作品でした。




それはそうと、伊咲先生の【ウルウ】(タイトルあってる?)がサヤビトのどこかに収録されるだろうと勝手に思ってたんですけども、それは・・・。次の作品が連載化したら収録してくださいね!伊咲先生ー!愛してるぞー!(←アカン