戦場は続くよどこまでも「女王陛下の補給線・第2巻」




モーニングでオススメは?とたまに聞かれることがありますが、ここ最近は「終電ちゃん」推しています。鉄道好き・・・・というわけではないですが、鉄道に縁ある人生を送っている身としては、なかなか興味深い作品です。というか、モーニングさんは人情+鉄道な作品が好きですね。もちろん私も好きです。
終電ちゃんはいわゆる鉄道擬人化ものになりますが、各路線に様々な人格があります。そんな擬人化された終電の皆さんが、路線での接続話だったり、鉄道豆知識みたいなのもありつつ、泣かせにくる作品になっています。オススメです。











戦場で待つ君へ。

一方、こちらは別冊少年マガジンで連載中の「女王陛下の補給線」です。戦争モノですが、実際のところは人情+鉄道な作品であり、終電ちゃんに負けず劣らずで鉄道物語をやってくれています。というより、別マガは良質な人情ものを生み出すのが上手いですよね。戦争という過酷な状況で頑張る主人公たち、その主人公たちを待つ人々、誰かが誰かのため・・・・という部分を押し出しています。


戦争の要の物語

タイトルが「女王陛下の補給線」というだけあって、王族が主人公であり、補給に関するお話となっています。主人公は二〇二試験補給中隊を率いるシャーロット・テューダー大尉。彼女が率いる中隊では、ラーヴィックと呼ばれる汽車を動かし、最前線から後方まで物資を届けています。


ラーヴィックを駆る

というわけで鉄道という側面があるお話です。それでいて、補給という部隊であること、つまり人同士の戦闘を積極的に行わない・・・・というより、そういう人たちを支えるお話になります。そして、それを率いるのが国の第4王女という・・・・。どうして第4王女が?と思う部分ではありますが、色々と複雑な事情があるご様子。もちろん彼女が率いている中隊の面々もかなりイロモノだったりするわけですが。
個人的には月マガパンプキンシザーズを思い出しました。パンプキン〜は戦災復興を扱う作品ですが、貴族の公女が主人公ですし、戦災復興のために体中に傷を作り続ける伍長がいたりします。余談ですが、女王陛下の補給線でも伍長がとんでもない兵器を用いつつ、ケガを作りつつ、戦っています。もちろん個々の性格は違いますし、彼らが戦う理由も違います。ただ、何かのためにと強く突き動かされる姿はどこか同じ雰囲気を感じさせます。



二〇二試験補給中隊

『兵士のために戦う兵士』
これは第1話で、作品からのメッセージのように描かれた言葉ですが、まさにその通りの物語となります。何度も言いますが、これは補給部隊によるお話なわけです。補給部隊というと国のために命を張る部隊とは少し違うわけですよね。でも、補給こそが戦争を長く続けていくためには重要な部分でもあるわけです。このあたりは他の戦争ものでも当然のように描かれているというか、補給が途絶えて負けました〜というのはよくある話。
この「女王陛下の補給線」はその部分に着目したものであり、本来であれば光をあてられるところではないけれども、兵士のために、仲間のために頑張っている兵士を描くわけです。まぁ、仲間からも蔑まれたりもしますし、栄光や栄誉があるわけでもないです。でも、その下支えだからこその物語が熱く厚く描かれます。

というか、中隊が濃すぎる気もしますが・・・・。←お姫様が率いている時点でおかしい







味方同士でひと悶着

さて、2巻では、1巻で奪われた物資を取り戻すために、何故か“味方”とひと騒動起こしています。
どういうことでしょうね??ちなみに、姫様と対峙しているのは同じ国のレジェンドだったりします。敵国が物資を奪ったのなら、それはそれは激戦となるでしょう。しかし、2巻冒頭で何故か味方のお偉いさんとモメている。その時点で理由は明白ですが、ここから物語が動きまくるのでなかなか面白いことになっています。もちろん中隊は無茶をすることになりますし、壊れた線路を修理したり、大急ぎで物資や人員をこのあと補給しまくることになります。


テルミット??

1巻はわりと二〇二試験補給中隊自体や、とんどもない伍長(単独で戦車を倒せる人)だったり姫様について描いた面が大きかったと思います。一方、2巻は中隊のメンバー紹介という側面が大きかったかもしれません。
色々あって壊れた線路を直す描写があったりしますが、ここでは保線屋(軌道を管理・修理する人たち)さんたちに着目した話なんかもあります。あとは、裏で土下座しながら資金を集める女性なんかも取り上げられていましたね。というか、レールの修理によく見る溶接を行う描写があってビックリしました。
https://www.youtube.com/watch?v=rvdf2FaE3sI
↑は同じ溶接を実演したものです。余談ですが、鉄道の日付近で鉄道 総研さんが実演を見せてくれたりするらしいですよ??もっと余談ですが、私の誕生日が鉄道の日らしいですよ???
とまぁ、わりと鉄道好きも喜びそうな描写が漫画の中でも描かれていたりします。残念?ながら、バラスト軌道で汽車(電車ではない)しかないので、鉄道特有のもっともっと面白い技術が出てくることは難しそうですが。走行速度を上げる技術とか出てきたら楽しそうですね。もしくは空を飛ぶてつど(ry





不穏な2巻の終わり方

“誰かのため”を強く描ける漫画だからこそ面白いわけですが、2巻の終わりではその信念が揺らぎそうな展開が待っていたりします。1巻からずーっと、呑気というか、仲間への信頼の笑顔のみというか、そんな姿しか見せてこなかった姫様が絶望的な表情を見せることになります。展開が展開なだけに、この表情もやむなし・・・・といったところですが、そういう意味では3巻以降も期待が大きいです。
笑顔になってくれるといいんですけど・・・・。





今の別マガでトップクラスに好きな作品です。やっぱり、誰かのため〜を描かれると弱いですね。しかも、鉄道だったり戦争だったりするわけですよ。人の生き死にもありつつなのがとても良いです。ここから、人外伍長の過去であったり、姫様にこれから待ち受けるであろう苦労話、さらに言えば戦争の行方も気になるところ。まだまだ楽しませてくれそうです。オススメ〜。