僕の隣の普通の独裁者「ディクテーターズ・第1巻」




今月の標語:そうだ、独裁しよう。

独裁:特定の個人・集団または階級が全権力を握り、支配すること。

新しい時代の独裁者漫画です。そして、ボーイミーツガールです。
独裁者漫画なのにボーイミーツガール。でもこれ、結構ラブい作品なんですよ。




いやぁ、独裁って大変ですね← 








タイトルはディクテーターズ」ディクテーター=独裁者って意味になりますが、複数形になっているので“独裁者たち”が正確なタイトルかもしれません。独裁者が複数出てくるのか・・・・。これは戦争ですわ!!!
ちなみに先に言っておきます。アワーズの巻末で漫画を描いている人の影響を結構受けてる、って言い方はちょっと違う気もしますけど、時々少佐を呼んできたくなる作品でもあります。そういや、○○ーズってのも寄せてる可能性があるのかと思ってみたり。でも、違うんだよなぁ。某ヒラコー先生の作品と同じような“大見得”はあるんですけど、ディクテーターズはその見得が実はハリボテで、内面の脆い脆い見得を描いた作品になっています。






独裁漫画

ちなみに連載は少年マガジンR知ってますか?マガジンRを知ってますか?ちょっと勘違いする人が多いので説明しておきます。

○同じ編集部の雜誌たち
・週マガ−マガスペ−別マガ
月マガマガジンR
ヤンマガ−月刊ヤンマガサード
マガジンエッジ(単独)

講談社から出ている「マガジン」と名のつく雜誌はたくさんあります。特に誤解されがちですが、別マガ(進撃とか)と月マガ(修羅門とか)は別物。そして今回紹介するディクテーターズ」が載るマガジンRは月マガと兄弟誌(=編集部は同じだけど名前の違う雜誌を出してる)の雜誌です。あまり理解されてないことが多いですけど、講談社の中にたくさん編集部があって、たくさん雜誌を作ってます。ややこしいですけどね〜。
ちなみに月マガは個人的にナンバーワンの月刊誌だと思ってます。正直言えば、進撃の載る別マガより面白い。そんな月マガという雜誌の兄弟誌がマガジンR。オススメ作品はたくさんありますが、隔月誌じゃなければな〜と思う毎日でございます。





舞台は日本

さて、物語の舞台は日本です。今の日本で独裁者って生まれないよな〜とは思いますが、ディクテーターズでは3つの国にわかれています。1つは主人公たちが暮らす“斜陽”という国。北は石川から愛知、三重といったところが該当します。
そんな斜陽を挟むように、東は“昔日帝国”、西は“十州”という好戦的な2つの国が存在しています。まぁ、斜陽=緩衝区間のようなものでしょうか。今の日本では信じられませんけどね。いつ2つの国による戦争が始まるか分からないという、客観的に見れば地獄。しかし斜陽の国に住む人達は平和だと勘違いしています。どうしてそんな勘違いができるのか謎すぎて仕方ありませんが、某進撃と同じく・・・・平和なんてあっけないものなんです。
でまぁ、1巻からばっちり戦闘状態になる斜陽ですが、慌てるのは軍人と全てを知る主人公たちだけ。これはそういう物語。


引き金はヒロインから

平和を享受していた斜陽の国に一人の少女がやってきます。進撃の巨人の巨人は南からやってくるそうですが、彼女は東からやって来ました。つまりは昔日帝国から。昔日帝国は軍人一族による独裁国家だそうで、一人の天才科学者によって兵器を量産し、圧倒的な軍事力を誇る国でもあります。
で、ぶっちゃけると、このヒロインがその天才科学者であるイカロス。それでいて昔日帝国のご息女。そして普通の女の子。誰かに守られるべき存在でありながら、自分の立場が理解できるからこそ、虚栄を張るしかない“ただの女の子”。頭がいいのは長所ではありますが、平和すぎる斜陽に対して自分が独裁者になるしかないという答えに辿り着く発想力が逆に短所かもしれません。



よろしいならば戦争だ。



彼女はいつか言いそうな気がする。






主人公との出会えた奇跡

以上が前提。まぁ前提の濃いこと、濃いこと。
その上で、斜陽に住むふっつーの学生・好屋牢(コノヤロー)の視点から物語が進みます。今の日本とはちょっと違う〜と上述してますが、機械的な文明もちょいちょい発達したディクテーターズ世界。昔日帝国には生物兵器?のようなものもいますし、平和な斜陽ですら今の科学力では到達できない便利グッズがたくさん。ただし、コノヤローは超絶機械音痴という設定。
コノヤローの特徴を挙げておくと、可愛い女の子に弱い、機械に弱い、ここぞでの度胸や集中力はある、めがね、狙撃能力が神クラス。うーん、どう見てものび太くんだな(笑)。作者の樋口紀信先生曰く、イカロス=ドラ、コノヤロー=のびを意識しているそうなので、そういう見方も面白いかもしれません。


私の兵隊

なお、イカロスの状況はかなり厳しいです。なんせ斜陽からすれば軍事国家のマッドサイエンティスト。出てきた昔日帝国からすれば逃亡者。引くも地獄、立ち止まるのも地獄。ただし、そんな状況で望むのは“平和”。自らが生み出した、望まぬ利用のされ方をする兵器たちは、多くの人々を殺してきました。彼女はそれを望んでいないわけです。
平和を望み昔日帝国を出てきましたが、斜陽が受け入れてくれるわけもなく・・・・。
そんな中で唯一心を許せる間柄になったのが、何の因果か“狙撃最強”のコノヤロー。まだ1巻ですが、イカロスが銃弾作成→コノヤローが狙撃という組み合わせになりそうな予感。とりあえず、1巻で見れる二人の共同作業はかなり必見。入り組んだ設定の中で、二人が心を許し合ってる、それだけで物語的に十分だコノヤロー!!って場面が見れます。個人的にはその場面に衝撃を受けました。二人の結婚式のような狙撃。二人のために時間が切り取られた狙撃。結構、必見です。





能力的におかしい

あと、コノヤローの狙撃能力はちょっと段違いですね。それを叶わせる集中力が彼にはあります。なお、超機械音痴(=精密機器を触るだけで何故か爆発)設定なので、ディクテーターズ世界からすればかなり旧型の銃を使っているというのもミソ。完璧にコノヤロー自身の能力による狙撃が見れます。まぁ、そのあたりは読んでもらえればと思います。
コノヤローはイカロスにとって唯一の兵隊です。まぁ、兵隊、兵士であるといっても、たった一人しかいません。もっと言えば軍事に全く関係のない普通の学生。国という単位から見ればちっぽけな軍事力。ちっぽけで、でっかいでっかい能力と気持ちを持った軍事力でもあります。天才科学者と組むことでどこまで大きな力となるのか、非常に楽しみな物語です。
冒頭に戻っていきますが、イカロスは独裁者になるつもりです。その発想の良し悪しは置いといて、それを叶えるだけの力がコノヤローにあるのかもしれません。イカロスの恋の暴走か、はたまた奇跡を起こせるのがコノヤローなのか。






物語上、大見得を切るしかないイカロス。しかし、彼女は兵器を作る能力はあっても心は普通の女の子なわけで。そんな女の子に恋したコノヤローと、自分を一生懸命守ってくれる男の子を見つけたイカロス。イカロスのハリボテのような大見得の裏にある、よわっちい部分をコノヤローがどう補っていくか。非常に楽しみです。
というか、どこまで描くつもりなんだろう?と思いつつ、そもそも日帝国どころか十州もいますし、日本以外がどうなっているのやら・・・・というわりと壮大な物語になってます。軍事的な独裁者になるつもりみたいですが、イカロスからすると本当に心許せるのがコノヤローだけというのもちょい心配。独裁できるんでしょうか?他国に対抗できるのでしょうか?まずは1巻ラストで出てきた、イカロスの父親であり昔日皇帝様をどう倒すのかが見ものです。