チェス少年の小さな大冒険「盤上のポラリス・第2巻」




「サマー・ソルト・ターン」(以下、SST)が熱い!やばい!面白すぎる!!・・・・というわけで、月マガSSTが面白いです。なぜこれほどまでに月マガは面白い作品を量産できるのでしょう?編集さんが敏腕なのかな???
さて、このSSTは、過去に天才と称されたスイマーを主人公とした物語で、一度は諦めた水泳を取り戻す姿を描いた作品です。何気に四角関係な恋愛模様も楽しい作品ですし、何より水泳にかけてしまった青春、水泳しかないのだと気付かされた青春を反芻したくなる作品です。掴んで離してしまったものを、もう一度、もう一度握りしめてほしいと主人公に願いを込める仲間たちと読者。


一度でいいからこの熱い青春を選んでほしい―。そう願うばかりです。


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SST月マガでも若い部類の連載作品となりますが、なんと同時期にSSTに負けず劣らずの作品が生まれています。それが「盤上のポラリスSSTと同じく2巻まで出ていますが、正直この2つの新連載が作る月マガの勢いは侮れません。というか、これに加えて優秀な看板作品もいますからね。強い、強すぎる。


少年×チェス×青春

今しかできないことをやれる。これって若さの象徴だと思うんですけど、それに加えて後ろを振り向かない純粋さ、真っ直ぐな気持ちが描ける少年漫画って強いと思います。「盤上のポラリスにはそれがあります。テーマは“チェス”。
とある少女と出会い、チェスに出会い、ライバルにも出会えた少年・一兵。2巻ではライバル、というかジュニアチャンピオンである灰堂レンに挑んだ大会の様子が描かれます。なお、一兵がチェスに出会ってからこの間・・・・2ヶ月。


勇者への憧れ

“伝説の勇者になって冒険の旅に出ること”が一兵の夢だそうです。微笑ましい少年の言葉と取るか、夢見がちな少年の妄想空想と思うかは人それぞれ。重要なのは、踏み込んだことのない領域に足を踏み入れる冒険、そして勇気。一兵はそれをチェスに見出しました。
子供の頃からチェスに触れる人ってどれくらいいるのでしょうね?特に日本だと将棋が最初に触れるボードゲームかなと思います(もしくはオセロ?)。一兵は街から遠く離れたところに住んでおり、なおさらチェスに触れる機会はありませんでした。しかし、転校してきた少女と仲良くなるために始めたチェスにどハマり。相手を倒すために戦術・戦略を練りに練るゲームですからね、少年勇者・一兵にとっては冒険のように見えたのかもしれません。


ガムシャラでは勝てない

しかし、勇敢であることが強さに繋がらないのが難しいですね・・・・。何も知らない少年がチェスをやるには経験が足りません。とはいえ、キングスギャンビットと呼ばれるオープニングの定跡を自ら考えつくだけの発想は持っている一兵。そのため2ヶ月という短期間の修行であっても、ある程度は勝てるまでになっています。
2巻で参加している大会でも、勝つことはできていますが一兵のガムシャラさが出すぎた試合になってたり。無鉄砲にガンガン進め!を繰り返す、まさに子供ながらのチェスによって自らの首を絞める一兵。ただ、ひらめき力はあるので強引に勝っていくという・・・・。チェスとはそういう競技なのだと表現しているあたり漫画として流石だなと。





ライバルと書いて・・・・

さて、2巻ではライバル(のはず)である灰堂レンとの勝負が中心に描かれます。一兵にとってライバルであり友達のレン。まぁ、レンが一兵どう思っているかは読んでもらうとして、同じくらいの年齢のチェスプレーヤーである一兵をそれなりに意識はしているようです。
上述してますがレンはジュニアチャンピオンです。一兵が勇者だなんだと言っている夢見る少年だとしたら、レンは、チェスという思考競技の探求者である彼は、現実を見れる大人のような子供と言えるかもしれませんね。そんなレンが「グランドマスターになりたい」という一兵を見たらどう思うでしょう。ルヒーが「何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ!」と怒るような状況になるかもしれません←諸々違う


2巻の見どころは

そんなわけで一兵vsレンとなります。2ヶ月のチェスプレーヤーとジュニアチャンピオンプレーヤーの対決。どう考えてもレンが有利であることには変わりありません。








弱い

当然ボッコボコです。
希望のカケラも残さないという気持ちでレンが臨んだ結果、一兵がボッコボコにされます。どうボッコボコなのかは作品を読んでください。絶望的にボッコボコです。なお、チェスのルールを知らなくても、ルール説明が書いてありますし、どう劣勢なのかが分かる程度には描かれているので優しい一冊になっていることは付け加えておきますね。というか読みやすい作品だと思います。
閑話休題。暗闇の中に落とされた一兵ですが、1巻で出会った少女との約束を思い出し立ち上がります。個人的には、この少女との出会いが格別良い話だなと思っているので、是非是非1巻から読んでほしいなと思います。まぁ、まずはこの(http://www.gmaga.co/comics/polaris/)1話目試し読みから読んでくれればと思います。純粋なボーイ・ミーツ・ガールが楽しめるはずです。現在はボーイ・ミーツ・チェスであったりボーイ・ミーツ・ボーイなので、それはそれで楽しいですが。
あと、心配する一兵の祖母の姿もグッとくるものがありますね。両親がおらず祖父母と暮らす一兵にとって、大切な保護者であり、理解者でもあるお祖母ちゃん。ただ、チェスは分からないのでどう応援していいものかと悩む場面も出てきたり。家族愛というものも、どこかこの作品のテーマではないかと思う部分もあるので、個人的には読み応えあると思ってますよ。


お前のチェスは勇者みたいだった

勝ったか負けたのかはまぁ置いといて、一兵とレンの友情が育まれたことだけは確実。まだ月マガ本誌でも描かれていませんが、ちはやふる方式で大きくなった彼らの物語が始まりそうかも?と思ってます。海外に行ってしまった一兵の大切な女の子(チェスを教えてくれた)との物語もそこで広がればいいなぁ〜と思ったり、今のまま少年少女としての物語でも面白そうだなぁ〜とも思ったり。まぁ、色々と複雑なのです。
というわけで、一兵はレンを憧れの対象として見ていたようです。勇者に憧れた一兵は、レンのチェスに、勇敢かつ強いチェスプレーヤーであるレンにも憧れていました。その気持ちを知ってか、2巻にしてレンのデレ期突入が見れます。・・・・ふふふっ、デレレンはかわいいな。





まっすぐでまっすぐでまっすぐな物語。チェスのスタイルがそのままなのが一兵らしい、盤上のポラリスらしい、と思いました。
青春とは誰にとっても平等であり、その時間は有限なのです。その有限の時の中で何かを得られるかもしれませんし、何も得られないかもしれません。ただ、その有限の中で、何か一つに時間を全振りする少年少女をどうしても応援したくなるわけです。心をへし折られそうになった中でも光を見た一兵に、その将来を期待したくなるわけです。心熱くなるチェス物語。超オススメです。