プロブレムという概念が存在しないノープロブレムな家族「のーぷろぶれむ家族・第1巻」



心が、痛い。

ヤングマガジンサードが結構面白いわけですよ。正直、ビックリです。100話目企画なんてのもありますし(100話目企画は単行本化してほしいね)、亜人ちゃん以外の看板作品が出てきそうな勢いもありますし。個人的には、月マガシリウスに負けてない月刊誌だと思ってます。
そんなわけで創刊時からやっている「のーぷろぶれむ家族」です。最初はほのぼの家族かな?と思った時期もありました。いやぁ、最近の展開辛いっす・・・・。心ちゃんがかわいそすぎる。





MAMA

これはとある家族の物語。ちょっと変わった家族の物語。主人公・織原心ちゃんと家族の物語――。
そもそもの驚きですが、まず“漫画の題材”としてこれを持ってきたかと思わされました。心ちゃんの母親、あえて継母と書かせてもらいますが、彼女が一風変わった存在となっています。というか・・・・人形なんですよ。意味がわからないかもしれませんが、心ちゃんのお父さんが再婚した(と思ってる)相手が人形でした。
漫画の題材としての話をしておくと、母親が人形です、を絵で表現することの難しさがあるわけですよ。色々と工夫はしていますが、動画ではないので漫画としての難しさがあるような気はします。もちろん違和感はなかったです。そこがまずスゴいと思います。


狂っとる

その上で、父親が人形を母親だと思っているという設定ですよ。人形好きという設定ではありません。人形を嫁だと思っています。
そのため、出かける時も普通に嫁と接するかのように振る舞います。それが当然だから。↑は家族旅行をしたいと旅行代理店を困らせてる場面ですが、これが普通になっています。もちろん困るのは相手、周囲、そして心ちゃんなわけで。そういえば最近のアニメでゾンビ世界で学校に暮らす作品があったかと思います。そこの主人公もゾンビ世界が見えてませんでしたっけ。どちらかと言えばそちらに近いでしょうか。





家庭訪問にて

(それ以外は)全然普通。





普通ってなんだろうね・・・・。






織原家は、父親(文字書き)、人形の母親、心ちゃん、弟のあおいの四人構成。前のお母さんがどうしたのかは1巻では不明なまま。どうして今の母親が来たのかもまだ不明。一つ言えるのは狂ってるということ。特に父親が狂ってるとしか思えません。問題は母親じゃなくて父親です。その狂気は読んでみないとわからないかもしれませんが。
心ちゃんの家庭訪問に来た学校の先生は戸惑っていました。それは母親なのだろうか。父親に呼ばれて来た旅行代理店の人は夫婦の定義を聞こうとしました。やはり普通では無いのです。人形を人形として扱うのではなく、母親だと言うには少し無理があるのだと思います。そうなってくると一番困るのは・・・・心ちゃんなわけです。それでも“家族”を壊すまいと四苦八苦する心ちゃんが何とも・・・・。




我慢の限界

1巻では一度我慢の限界を迎えてます。言葉をぶつける相手が人形である母親しかないというのもなぁ。何とも言えないよなぁ・・・・。
心ちゃんは12歳。母親のこともあり友達を作っていません。作ってドン引きされたら学校生活が大変になりますからね。家の中では父親との家族ごっこ(あえてごっこと言わせてもらいます)に苦労し、外では友達を作るまいと振る舞うわけです。12歳なのに・・・・ね。
怒りをぶつける相手が慰めてくれるわけでも、頭を撫でてくれるわけでもありません。・・・・父親は慰めてくれるものだと疑ってもいないわけですが。まぁ、唯一の救いがあるとすれば、そんな狂った家族を見守ってくれる存在もあるということでしょうか。頑張り続ける心ちゃんを支えたくなると言ってくれる大人がいるということでしょうか。心ちゃんの心が死ぬ前に何とかしてもらいたいものです。







学校の人達との遭遇

・・・・と思っていたのですが、1巻では同じクラスの人たちに秘密がバレてしまいます。↑の場面で呑気にしているのが父親だけという修羅場。


やばいじゃん

(心が)やばい・・・・。
一番恐れていたのは誰かにバレること。中には理解してくれる人もいますが、普通の反応はこうなりますよね。今回、ドール好きの人には申し訳ないことを言ってますけど、ちょっとこの家族はその範疇を超えすぎというか。自分の責任だけならまだしも、父親が人形を妻にしたことで、子供が困ってるわけですよ。それはちょっと痛いなと。
逆に自分が心ちゃんだったとしたら。やっぱりそれは辛いし、自分なら絶対に父親に文句を言うだろうと思います。しかし、心ちゃんは家族を壊さないように父親の前では普通を装うわけです。





いや、ほんと痛い作品です。帯文の「心が、痛い」というのは、読者もさることながら心ちゃん自身の痛みのある作品だと思うわけです。どこをどう見れば“のーぶれぶれむ”なのだろうなあと本気で思いますよ。ただし、読者的には心ちゃんの健気可愛いが数少ない癒やしではあるので、そちらが気になる方にも読んでほしいと思います。こういう作品を生み出すあたり、ヤンマガサード侮りがたしといったところでしょうか。オススメ。