これぞまさに金魚の交わり「すくってごらん・第3巻」



このマンガがすごいよ

BE LOVEで連載していた「すくってごらん」の最終巻が出ました。この作品、このマンガがなんちゃらで14位だったそうです。いや〜もっと上位なんじゃないかと思ってたんですけどね。悔しい。
この作品の特徴といえばなんといっても金魚すくいがテーマだというところです。舞台は金魚すくいの全国大会も開かれている奈良県大和郡山市。まぁ、この作品を読んで初めて、全国大会があること等を知ったんですけども・・・・。そんな大和郡山市にやってきた主人公と、金魚すくいを愛する面々による、金魚すくい愛溢れる作品になっています。


主人公が出逢ったもの

主人公の香芝誠は元エリート銀行員でした・・・・が、ちょっとしたミスで地方にとばされます。で、ついた先が大和郡山市。街中の金魚すくい一色に圧倒されつつ、金魚すくい(と素敵な女性)に出逢います。まぁ、ちょっと読者も周囲の人も軽く引く程度には変な人だな〜と思いました。台所で煮干しとスプーンで金魚すくいの練習を始めた時はどうしたものかと悩みましたw←実際にそんな練習法あるのか?
ただ、金魚すくいの魅力は相当なものだったようです。そもそも金魚すくいの金魚って観賞用とは違うものなので、いわゆる脱落者みたいなものなんですよね。そんな金魚に自分を重ね、掬うことに、救うことに、没頭していきます。


愛する人のため

一方、金魚すくいを始めるきっかけとなった女性・生駒吉乃。後述しますが、金魚すくいと出逢うきっかけとなった金魚問屋の王寺店長を含め、色んな人たちが出てきます。しかし、とにかくもう香芝を突き動かしたのは吉乃なんですよ。まぁ、吉乃が香芝を選ぶ・・・・ような展開にはならんのですが、“現代の大和撫子と言われるだけあって美しいです。もちろん彼女も金魚すくいラバーズ。


ベルヌーイの定理

まぁ、そんなこんなで1巻、2巻では香芝を中心とした金魚すくいラバーズの物語が描かれます。金魚すくいが好きな人間を、金魚すくいが好きな人間が好きにならないわけがありません。
例えば香芝がベルヌーイの定理を説明するんですけど、それをよくわからんけど聞く面々。金魚すくいベルヌーイの定理の話を持ってくるあたり驚きですが、難しい話題でも聞こうとする、香芝の言うことだからとりあえず聞いてみるか感。というかベルヌーイの定理なんて香芝はどこで知ったんだろう。流体系のエネルギー保存則なんですけど、銀行員になるような人もどこかで勉強するのかね?作者の大谷先生も意外とおっかなびっくりで描いてたかもしれませんが。


王寺とのお話へ

香芝と関わり、香芝の(変な?)魅力を感じ、色んな人が交わっていきます。好きな話の一つですが、椀の中に40匹以上もいたのに自分が初めてすくった金魚を一発で当てる話(1巻)なんかは香芝の良さがよく出ていたと思います。
吉乃もそうですし、吉乃のおじいさん、一緒にチームになった面々と交わり金魚すくいをより好きになっていく香芝。唯一、王寺だけはちょっと違っていました。香芝の特異な感性や能力にいち早く気付いていましたが、どこか金魚すくいという競技に対して壁を作っていました。ただ、そんな王寺ですが、過去には超凄腕の金魚すくいストだったわけで・・・・。
過去にとある出来事があり、金魚すくいをやめていましたが、香芝に触発されて勝負することになります。


金魚すくいは楽しい

王寺にどんな過去があったか、どっちが勝ったかは是非読んでみてください。少なくとも、王寺の過去は金魚すくいスト的にはショックなものだと思いましたし、競技として金魚すくいを拒絶してしまうのも何とな〜く理解できます。重要なのは、そんな王寺に金魚すくいの楽しさを思い出させたのが香芝ということでしょう。金魚を掬い救う漫画ではありますが、王寺も救われたということでしょうか。もちろん香芝も救われたのだと思います。
金魚すくいって結構奥深いんですよ。金魚をすくうポイ選びから試合が始まるどころか、その日の環境、例えば気温とかそういったものも影響するらしいです。お祭りでやったことありますが、そんなお遊びでは感じ取れない楽しさがあるのだと、この作品から学びました。
試合はたったの3分間。その3分間の中で、何十匹もすくうわけです。第3巻の王寺と香芝の試合は、たった3分間の試合は密度の濃いものでした。王寺が金魚すくいの競技を、誰かと競う楽しさを取り戻すには十分な時間だったと思います。この漫画、かなり面白いぞ!!!




まぁ、一つ残念だなと思ったのは、もうあと1巻分くらいは描けたのかな〜と。せっかくこれだけ面白いのだから、まだ描ける部分があったのかな?とか、もう少し厚く描いてもよかった部分もあるかな?とか思ったり。巻末で番外編とかも・・・・なんて書いてあったので期待したいところですね。
とはいえ、最後のページもきれいに終わってたなという印象です。言葉遊びがうまいというか。紙のミスで転勤させられた香芝が、紙を使った競技に出逢う。まさに紙のみぞ知る物語です。まぁ、それ抜きにしても、香芝の言葉って結構印象深く残るものが多くて、作品的に好印象だったと思いました。あえて書いてませんが、香芝とその周辺のかかわり合いはとても良かったと思います。素人香芝の金魚すくい熱にあてられていく感じが良いです。とりあえずコータをうちの息子にしたい>□<
作者の大谷先生には、もちろんこの続きも期待したいところですが、BE LOVEでの新作にも期待したいです。絵も上手いですし期待大です。全3巻という手に取りやすい巻数&金魚熱がすごいので楽しい作品ですよ。オススメ〜。