作者が歩くよどこまでも「敗走記・第1巻」



6日間約25キロの旅!

先月はさよならタマちゃんの記事(http://d.hatena.ne.jp/toldo13/20130825/p1)に大反響ありがとうございました。このまま年末の何かにもランクインするといいですね。期待しています。
さて、同じくイブニングで連載していた、尚且つ、ほぼ同時期に連載していた「敗走記」という作品があります。こちらもタマちゃんと同じく作者自身の体験を元にした作品となります。多分、どちらも辛い経験をした作品になると思います・・・。
さて、さよならタマちゃん「敗走記」、一体何が違うのか。それは簡単。寝っぱなしか歩き続けるか。この違いです(←ザックリしすぎw







シカイズ氏(38)、歩く

単行本の帯にも書いてありますが、250キロの行程(もちろん山あり谷あり)を6日間で歩くというイベントを自らに課し、それを漫画しています。単純計算で毎日フルマラソン状態です。皆さん・・・仕事だからって出来ますか??俺なら辞退しますねw 仮に漫画家という職業だったとしても、歩く以外のテーマを掲げますよきっと。
ちなみに、作中ではシカイズさんという名前になっていますが、もちろん作者のしまたけひと先生を模したものです。なお、当然のことながらしまたけひと先生は確実に歩いていますのであしからず。そうじゃないと、こんなにも辛さが伝わる作品は描けませんよ。


萌え絵が専門です

シカイズ氏(しまたけひと先生)は結構いい年齢をしていますが、それなりに経歴のある漫画家さんだったりするわけですよ。成年作品も手がけるような可愛い女の子を描く漫画家さん。・・・なのに敗走記では、辛い顔をした40手前のオッサン(自画)が歩くだけの作品を描くとか。誰得だよ!!!





敗走記とは

さて、ただただ歩くお話ではありません(当然ですが)。この作品では、関ヶ原の戦いで破れた西軍の島津義弘の敗走経路をなぞって歩きます。この敗走自体は結構有名でして、「島津の退き口」で調べれば詳細が分かるかと思います。なお、この島津の退き口にて、某誌で有名なドリフターズ島津豊久が義弘の身代わりになって死んでます。あ、ドリフだと死ぬ前(?)に別世界に行ってましたね。
関ヶ原で西軍が敗れた後の悲惨さは歴史が物語っていますけど、この島津の退き口もなかなか大変だったようで・・・。上述してますが、フルマラソンを6日分やるわけです。しかも命を狙われることが当然の状態なわけです。そんな苦労を共有すべく、シカイズ氏は歩きます。漫画のために歩きます。個人的には意義も意味も分からない部分はありますが、歩いてこそ分かることも多々あるのだろうなぁとは思います。最近世界遺産になった富士山の登山なんていい例かもしれませんねぇ。


一緒に歩いてます

あと、この作品、1話の中でお話が2つに分かれます。1つはシカイズ氏が歩いた行程を当時の武士たちが歩いた・・・ような回想場面、もう1つは実際にシカイズ氏が出会った人々やものを描く場面があります。あとがきに書いているんですけど、わりとフィクションを入れているそうです。実際に作中のように話したのか、歩いたのか、そのあたりは当然不明ですからね。なお、出会った人々とのエピソードもちょっと大袈裟目だそうです。その分島津の退き口と、シカイズ氏の敗走記がよくマッチしていたと思います。そのおかげか1話毎の作品の読み応えはあったと思います。というか、回想が無かったら・・・歩くだけの描写しかありませんしねw


○モじゃありません

しかしまぁ、出会った人々が面白いのなんの。個人的にお気に入りは、↑のバツ2のオッサンでしょうか。連れ(♀)が来れなくなったとかで、旅館をご一緒しませんか?とシカイズ氏に提案しています。誘う方も誘う方ですけど、提案に乗る方も乗る方やで!!ちなみに劇団なんかをやってる人らしいです。
その他にも、当然女の人が出てきますし、人生を見つめなおそうとしているドクターなんかは作品にとって重要なキャラだったりもします。あ、女の人とはシカイズ氏・・・仲良くなれてませんので!あはははは!(←でも、女性と話そうとするだけ立派だと思いまんた






辛いです

しかしまぁ、シカイズ氏のブツブツ呟きの多いことですよ。いや、ほとんど一人で歩いているからしょうがないんでしょうけどね。漫画で見るとブツブツの多さが際立ちます。ただし、シカイズ氏の提案から始まっているため、しょうがない企画なわけですよ。それでいてシカイズ氏に自らを投影したしまたけひと先生が、よくぞまぁここまで自己分析して描いているなと。もちっとカッコよく描いてもいいのにと思うわけですよ。
ちょっと途中で書きましたが、やっぱり歩いてみないと、歩いたからこそ分かるものがあるんでしょうね。作中でのシカイズ氏が徐々にではありますが、悟りにもにた成長を遂げているようにも見えます。作者自身の成長物語として見るのも面白いと思います。というか、誰にでも自分を見つめ直したい時があるでしょう。その手助けになるかもしれません・・・(多分)。


これは講談社の仕事です

ただの旅行記ではありません。楽しいと思える部分があるとは思えません。これは仕事です。講談社の仕事です。しかし、だからこそシカイズ氏は歩いたわけです(途中色々ありますけどねw)。
何度も言いますが、歩いた人が自ら目指した場所に到達したからこそ得られる達成感というものがあるわけです。そのゴールまでの道のりは、島津家の人々と歩いた味わいがあります。様々な人に出会った温かみと、ちょっとした嫉妬があります。そして、苦難を乗り越えてのゴールでの感動。歴史好きも、可愛い女の子が好きな人も、旅が好きな人も、きっと楽しめるでしょう(多分)。




こう言ってはなんですけど、よくぞまぁ“歩くだけ”の作品をここまでのものにしたなぁというのが一番スゴイと思っています。一人の男が自分の人生を振り返る様はなかなかに見応えあると思うわけですよ。
あと、何が一番気になっているかというと・・・・この単行本にナンバリングがあることなんですが(敗走記1になってます)。また歩く・・・のか?確かに島津の退き口は薩摩まで戻ってますけど・・・。本当にやるのかなぁ。というか既に歩いてたりして。あはははは・・・って笑えないぜ!!!!
・・・でもまぁ、講談社の仕事だししょうがないか(←