カメラ越しに見える三者三様の思い「彼女とカメラと彼女の季節・2巻」




“兄弟誌の女王”こと月子先生の最新刊「彼女とカメラと彼女の季節」の2巻が発売されました。人が人を本気で好きになることって意外と何が起きるか分からないものでして・・・。高校3年時に初めて接近することになった二人の少女と、共通項としての“カメラ”という存在が非常に際立つ作品となっています。
ちょっと説明が遅れましたが、月子先生は何故か兄弟誌での連載が多いです。例えば、現在は月刊ヤンマガ(連載時は別冊ヤンマガ)で連載していました。もちろん彼女とカメラと〜(通称カノカメ)は、モーニング・ツーで連載しています。他にも別マガで読み切りが載ったり、今ではグフタでも連載を持っていたり。ここで決して勘違いして欲しくないのは、“二軍の帝王”みたいなものではないということ。講談社の兄弟誌に二軍誌なんか存在しねええ!!!そもそも兄弟誌は本誌でもなかなかやらない“クセ”を持った作品が見れる場所なんです。もちろん月子先生は当然の如く、一風変わった面白い作品を描く漫画家さんだと思います。どの作品を読んでも絶対に面白いですよ(断言)。



アタイのこと好きなんか?

うおおおおおーい、ど直球ううううううう!!!
カメラと一心同体な少女・仙堂ユキ。そんなユキのことが好きな少女・深山あかり。カノカメはこの二人の少女の物語として描かれます。2巻では唐突にユキから「(自分のことが)好き?」「抱きたい?」という質問を受けることになりますが、あかりの想いは有耶無耶にされたまま消えていくことになります。まぁ、この質問を受けてあかりはユキの手を握ったのですが、カメラで撮りたいものが見つかり“何事もなかったかのように”ユキはその手を離します。
好きか?と問われ、手を握ったら、無視されカメラを撮り始めた。言っている意味が分からないかと思いますが、ユキという少女はそういう子なんです。
ただ、カメラ>>あかりという気持ちだったのかどうかすらちょっと分からないんですよねぇ。ユキに眠る笑顔を引き出したのは誰でもないあかりでしたし・・・。もちろん女の子だから〜という理由で拒絶していることは無いと思います。というか絶対にない。


付き合いますかね?

百合作品かよ〜と思う人がいるかもしれません。いえいえ、そう単純でもないんです。この二人の少女の間に凛太郎という野球少年が入ってくるんです。はっきりと明示はされていませんが、ユキは凛太郎が好き・・・かもしれないご様子。ただ、凛太郎はあかりが好き(こちらははっきりとした意思表示あり)。で、あかりはユキが好き・・・と。女性2人に男性1人だと、男性1人を巡って対立するような流れになるのが一般的な恋愛漫画。しかし、こちらはなんとぐるりと一周してしまう恋愛漫画
じゃあ、あかりが凛太郎に「付き合う?」という話題を出したのは何故か。簡単な話です。単純にユキへの当て付けです。フラれてはいないんですけど、拒絶のようにも感じられること(手を握ったら離された)をされ、自分を好きでいてくれる凛太郎に、ユキが好きかもしれない凛太郎に「付き合う?」と言い放ったわけでして・・・。
この時期の少年少女は複雑だ〜というのはよく存じ上げております(漫画知識)。しかし、この作品はもっと複雑になってきています。女性と女性の間に男性が入ってきているということも当然のことながら、そもそもユキが何を考えているか分からないというのが・・・ね。辛い、色々と辛い。
なお、あかりに付き合おうと言われた者の、結局は付き合わなかった模様・・・。


俺が消すから!!!

ネットを見ていると“百合作品”ということを前提に色々と感想を見かけます。ただ、俺はそこに凛太郎がいるということがとても大切だと思っています。いやぁ、この凛太郎という男がとてもいい奴すぎて泣けてくるわけですよ。あかりの本当の気持ちを知りながら、助けてあげようとする男、いや漢。
例え片思いでも、好きな女の子が困っていたら助けてあげる。とてもとてもナイスガイです。クラスの女子があかりをdisってた時の対応も非常にGOOD。





この作品、ユキ以外は頑張ってる(?)んだけどなー。ユキがなぁ・・・。








ユー、凛太郎と付き合っちゃいなよ

( д) ゚ ゚
ユ、ユキさん・・・。あんた、あかりの気持ちを知ってたじゃありませんか。そっ、それなのにそんなこと言うの・・・?えっ、えっ、マジで???逆に凄いわ、この子・・・。常識のちょっと、いやかなり外れたところを歩いています。これが芸術家ということか・・・。
もちろんあかりも黙ってみているわけではありません。ユキの狙い通りに凛太郎と仲良くすることで、ユキの気持ち(凛太郎LOVE)を引き出そうと画策します。器用なのか不器用なのか分からないですよ、ホント・・・。




1巻ではあかりがユキに惹かれていく様が描かれていました。2巻ではハイスピードにそれぞれの恋模様が進んでいきます。漫画という媒体であるためか、全場面をカメラで切り取っているかのようにも見せられ続けてしまいました。場面毎に変化するあかりの心情。あかりの写真でしか心情の読み取れないユキ。ユキという少女はカメラ越しにしかものが見れなくなっているのかもしれません。一方、自身のカメラと、ユキのカメラ越しに自分を表現するあかり。そして、写されるだけの凛太郎。
彼女とカメラと彼女の季節という作品を説明しきるのは難しいですねぇ。ただ、あかり、ユキ、凛太郎という三人だけの恋愛物語であることが何か嬉しい。そして、楽しい。そんな作品です。まぁ、もうちょっとユキの反応がよければな〜と思ってみたり。あかりがねぇ・・・、あかりがずっと泣きっぱなしなんですよ。それを救えるのがユキしかいないというのも・・・ね。色々と考えさせられますよ。


百合作品にそれほど詳しくないので何とも言えませんが、この三角関係はどこに行くのがいいんでしょう?ぶっちゃけ、今のユキに期待をするよりは、あかりは凛太郎と付き合ったほうが楽しいかもしれませんけど。まぁ、幼馴染という関係を考えるだけでも、ユキと凛太郎という組み合わせはアリだと思っています。その場合は、あかりを俺がもらっていきますけど(←
ユキのおかげで全然先が見えません。何が彼女たちにとって一番の選択肢なんでしょう。正月に悩んでみたけど、おじさんの知能では解決できなかったよ・・・。そうそう、この作品の肝でもあるカメラについても色々と描かれているので学んでみたいですな。百合とカメラを知れば、よりカノカメを楽しめるのかもとか思ってみたり。今度誰かレクチャーしてください(女性希望)。




何にせよ、この3人が幸せな物語になってくれることを祈るばかりです。