路地の時間は止まらず、恋の花は咲き誇る「路地恋花・最終巻」



路地恋花・最終巻

good!フタヌーン(以下、グフタ)創刊時から連載していた麻生みこと先生の路地恋花がついに終了してしまいました。もう創刊当時の作品数から半分くらいには減ってしまいましたね。始まればいつかは終わる。当然のことではありますが、とても寂しい事実です。
路地恋花の特徴といえば独特な表紙でしょうか。薄い紙を使用して、表紙の下に描かれている絵柄が見えます。手触りも違いますね。絵柄の特徴として、1巻から順に春夏秋冬が表現されています。というわけで最終巻は冬です。表紙の下にある氷の結晶が透けて見えます。
・・・しかし、四季を表現していたと考えると4巻で終了することが決まっていたのかもしれません。




素敵な恋物語

タイトルの通り全編にわたって恋愛が繰り広げられています。ハッピーエンドもバッドエンドも、男女、女女、はたまた年齢差のあるお話だったり。恋模様は十人十色。全20話に麻生みこと色の溢れる恋愛ストーリーが詰め込まれていました。
表紙がちょっと変わっているという話をしましたが、1話完結作品の中でずっと描かれ続けた女性のお仕事が手製本だったことも影響しているのでしょう。最終話を飾ったのもその女性です。舞台は京都のとある職人長屋。売れない職人が集まり日々、仕事?趣味?に勤しんでいます。その女性も長屋で頑張る一人なのです・・・。

というわけで、最終話を飾った手製本職人・小春の物語が素晴らしかったです。この作品の全部、ぜーんぶが恋愛物語。その中でも遠回りしたようなしてないような。もどかしいけど、お互いに変な信頼関係があって、ハッピーエンドで。小春というと本来なら秋〜冬の言葉なんですけど、そちらの意味ではなく、本当に小さな春が始まった感じで話を終わらせたってのがたまりません。きゅんとします。




風花ギリギリ

シルバーアクセを作るみっちゃんと、その彼女の風花のお話も印象に残るお話でした。商売で成功しているとても厳しい風花の父親が登場し、みっちゃんを追い詰めて(?)いきます。多分、信頼はしていたと思いますが・・・。4巻中の話で風花父からの難題を何とかこなし、最終的には自立の道を歩むみっちゃん。その後のみっちゃんを描いた1P(もちろん単行本オマケ)がとても面白くてw 結婚しようと焦るみっちゃんと、「遅いわー」と泣く風花。4巻最高の1枚です。
お嬢様してた風花が、自分の希望年齢ギリギリ(29歳)まで根気強く待っていたというリアル感ww 風花には悪いですが、ちょっと笑ってしまいました。
何でこの二人の話が印象に残ったかというと、長屋生活、つまり職人気質で仕事をすることの難しさを描いていたからなんですよね。風花父は色んなお店を経営している社長さん。(本来の)社会人が持つべき常識を持ち合わせています。生活するために何をすべきか。将来を真剣に考えないまま、作りたいものを作るという男が大切な娘を持っていっていいのか。まぁ、実は納期を相当早めにしていた風花父に「納期がまだあったのなら、もっと凝ったものを作れた」と嘆いたみっちゃんが、ある種の回答を持ってきていたように思いますけどね。
最終的に風花父にお金を借りて独立してます。ギリギリになったものの風花を養えるような生活ができて。少なくとも何も考えてない男より、面白いほどに仕事に熱中できる男の方が成功しやすかった・・・のかな?“仕事”ってものが印象に残るお話。人を預かるってことは何が必要なのかを印象強くして描いてたお話。俺も遊んでいられないなと思わされたお話でした。









震えるほど幸せだったと語る弁護士さん・・・は女性と消えていきました

4巻だと、花屋さんと弁護士さん、人形師と劇団員、靴屋とお客さん等々。お話は多岐にわたります。なお、弁護士さん(♀)は同僚の女性と消えていきましたw
どうしても1つ言いたいのは、出てくる女の人の方言がすっごい可愛い!!京都が舞台ということで関西系の喋り方なんですが、麻生先生の絵柄と完璧にマッチしてました。可愛い!本当に可愛い!!ふんわりしてて可愛い!でも、どこか芯の通った話し方をしてるのも可愛い!!ここ注目ポイントですよ。


編集チーフから恋愛ものがいいと言われ、担当から京都がいいと言われ、麻生先生はコミュニティを描きたいと思っていて出来あがった作品。甘々なようで、甘酸っぱくて、でもリアルのように辛〜い部分もあったり。路地物語はとんでもない恋愛漫画になっていました。人がいるということは、何らかの物語ができるわけです。ただの友情物語かもしれませんし、生きる糧たる恋愛的なものかもしれません。そんな物語を路地に住む人たちが創りあげました。
作中、多くの人が路地から出て行ってます。そして新しい人が路地にやってきます。このサイクルが続きます。もちろんその路地にいたからといって成功する人ばかりではないかもしれません・・・が、それとは別に時間だけは淡々と動き続けます。「路地に恋した」とは上手いことを言うなあと思いましたけど、そこの路地の時間は止まっているようで動いています。恋も大切にしながら、人生は動くという雰囲気がとても好きでした。



長々と書いてしまいましたが、何のことはない。むちゃくちゃおもしれーってことですよ。あと、恋がしたくなる。そういう作品でした。路地に住む人たちの職人気質な部分も、恋愛に戸惑ったりする部分も全部が素晴らしいです。全4巻、オススメです。




ところで俺の恋花はいつ咲くのでしょうか・・・。