「きのこいぬ」もう奇跡としか言いようがない



なんやこいつ・・・

絵本作家の夕闇ほたるの家にやってきた・・・いや、生えていたきのこ。それが「きのこいぬ」。左耳がピンク色をしたきのこ。かろうじて犬に見えなくもない生物。それが「きのこいぬ」。はっきり言っておきます。何なのか分からないんです・・・。



愛玩動物ですか?

犬っぽいのかな?と思いきや、ドッグフードは食べません。むしろメロンパン(1巻)とたこ焼き(2巻)を食べます。たこ焼きについては自分で作るようにもなります。じゃあ、きのこ的にはどうなの??と思ってたら、“胞子”を出します。胞子ですよ、胞子。そんなの、ほぼきのこじゃないですか。犬のようで犬でない。きのこのようできのこでない。いや、そもそもどこからが犬で、どこからがきのこなんだ???教えてください>□<
どちらかというと、少年アシベのゴマちゃんに近いかもしれません。喋れはしませんが、人の言葉をある程度理解しています。嬉しい時には笑い、悔しいときには怒ります。ゆるキャラ・・・と言っていいんでしょうか。しかし、きのこいぬって気持ち悪くないんですよね・・・。ただただ可愛い。


なあ、粉買ってこいや

全ての仕草が可愛いんですよ!!ここ最近で一番可愛いキャラがここにいる。世界中の可愛らしさを集めた存在がここにいる。もう・・・あれだ、きのこいぬは可愛いという概念を実体化した存在に違いないわ。うんうん。
基本的には食べると寝るを繰り返しています。こんな社畜だらけの現代社会にあって、きのこいぬのような自由な生き方は憧れですらあります。そうか、読んでて俺はこいつに癒されているのか・・・。ペットに犬を飼ってた人はきっと好きになるんじゃないでしょうか。こいつが犬かどうかは討論すべきかと思いますけどね。



お父さんとお母さんにちょっとしか好きって言えなかったから

トーリーを少し説明しておきますが、絵本作家の夕闇ほたるが飼っていた犬のはなこが亡くなります。父を亡くし、母を亡くし、引き取ってくれた祖父も、そして絵本作家となってから一緒に育ったはなこも亡くなります。絵本作家になったのは「誰かに好きと伝えたかった」から。「好きっていっぱい書く」とほたる少年は誓ったから。題材は犬のはなこ。ただ、唯一の家族であったはなこが死んでしまい、全てのやる気を失っていました。そこに現れたのが謎の生物・きのこいぬ。
いつも寂しそうにしていたほたるを、きのこは見ていました。ずっと見守っていたほたるのために、犬として登場し、辛い思い出をポイーしてしまいます。


上述したメロンパンとたこ焼き。実はそれなりに意味があるんです。いつもほたるが一人で食べていたのがメロンパン。寂しさの象徴であるかのようなメロンパンをほたるの分まで全て食べてしまいます。その後、きのこいぬを中心としてほたるの周囲に人が集まり、たこ焼きを皆で作ります。



たこ焼きは一人じゃない証拠

そこから必ずたこ焼きを食べるようになります。たこ焼きはほたるが一人じゃないという証拠となります。食欲旺盛なこともあり、ペロリと消えてしまいます。まるでほたるの寂しさまで食べるように・・・。


決してきのこいぬが可愛いだけの作品ではありません。家族って何だろうか、寂しさって何だろうかと気付かせてくれる作品です。お話がとてもとても優しすぎて泣けます。まるで優しい絵本を読んでいるような気分にさせてくれます。「好きです」と伝えたいと絵本作家になったほたるに、きのこいぬが一生懸命書いて送ったとある一言・・・。もう泣くしかない。



きのこいぬはペットのようで、自分の子供のようで、そして謎の生き物で。何と言うか全てが愛おしい。愛おしすぎる。この生物が誕生したことはもう奇跡としか言いようがないね。
犬好きもきのこ好きも。犬嫌いもきのこ嫌い。みんながみんな、楽しめる作品だと思います。とにかくもう本当にオススメ!




あ、そういえばこれ・・・講談社作品じゃなかった。