面白さに終わりなしやんか「ましろのおと」

月刊少年マガジンで連載中のましろのおと。ついに講談社漫画賞を受賞しました。ここ最近の漫画関係ランキングでちょくちょく顔を出していたので納得の受賞です。羅川先生、おめでとうございます。もうアレですね。羅川先生は名作の安打製造機ですよ。外れがないです>□<
とにかく人間描写、心理描写が素敵ですよね。それでいてテーマに軸があって読みごたえもある。「ましろのおと」は三味線漫画ですけど、三味線の面白さも描きつつ、奥深さも教えてくれているような気がします。三味線協会からいくらか貰ってるんじゃないかというくらいに三味線の良さを描いています。講談社漫画賞を獲ったこの作品を読まないとか・・・ちょっと勿体無いかも??



主人公・澤村雪(さわむらせつ)

青森から上京してきた澤村雪が三味線を通して色んな人間と関わり合っていく物語です。無愛想ですが、意外と人情深い?しかも三味線を演奏させれば驚くほどの技術・音を魅せてくれます。ただし、それも気まぐれモード次第ですが・・・。
人前で演奏することの意義を知らない男なんです。プロのように常にいい音を・・・という演奏ではなく、その時の気分次第で平凡にも最高の音にも成り得ます。師匠は祖父。祖父も超絶技巧の使い手でしたが、世に出ることはなく、周囲の人間から惜しまれていました。雪もそんな祖父と同じように生きており、大会に出たことがない、大勢の前で演奏したことがない、ただ・・・一部では知られた存在だったわけです。




悔しい

そんな澤村雪という男を大会に出すきっかけとなった女子高生とその他大勢(笑)。ちょっとしたきっかけでしたが、三味線の高校全国大会へと団体戦個人戦と出場することになります。第6巻では団体戦の雪たちの演奏が描かれており、それがものすっっっっっっごく鳥肌ものだったんですよ。
演奏の中央ではなく周りを引き立てる役に徹しながら、チームとしての演奏を際立たせていました。緊張する面々以上を驚かせるアドリブをかましつつ、それでも裏方に徹しています。それもこれも普通の高校生ではできないような超絶技巧のおかげ。2倍速で演奏しながら、力が劣る面々の演奏の色を何倍にも広げていました。もちろん漫画は紙媒体なんですけど、演奏の色・音が伝わってくる作品です。このあたりは羅川先生の超絶技巧でしょうw

雪のおかげで会場を一番盛り上げました。しかし、結果は3位。もちろん良い結果ではあったものの、頑張った、頑張ってきた自負がある面々にとっては悔しい結果だったようで。逆に言えば、泣けるほど頑張った・・・ということなんでしょう。まぁ、雪のアドリブもそんな仲間の頑張りに応えるためにやったことだったんですけどね・・・。




神木流絃こと田沼源造

第6巻では雪の出生について驚きの事実が発覚します。ライバルキャラの父親でもある神木流絃が実は雪の父親であった・・・。確かに雪の親族は、兄、母、祖父しか出てきていません。まさかこの男が・・・という人間なんですよ!!
本当の父である神木流絃は、雪に名前を受け継いでもらいたいと言います。しかし、雪の母親は断ります。どちらも雪が大切なように見えて、実は雪の持つ祖父・松五郎の音が大切なようで・・・。雪は確かに祖父の音を受け継いでいますが、それは決して雪の音ではありません。神木流絃はその音を手に入れたいと思っています。雪の母親は祖父の音を世に知らしめたいと思っています。そこに、雪という存在はありません。




荒川トゥイン

話は変わりますが、個人戦もスタートしています。団体戦で活躍した面々が個人で登場し、他人の音を聞く雪にとっても面白い刺激を与えています。
何度も言いますが、雪には雪の音があります。団体戦では見せませんでしたが、彼一人の音があるわけです。そういう意味でも個人戦は大切な場となるかもしれませんね。特に”自分の音”を持っている個性の強い相手ばかりです。きっと、雪の音にいい影響を与えてくれるであろうことを期待してしまいます。
なお、個人戦一発目のライバルは荒川くん。通称・荒川トゥインという糸を鳴らす技法を使います。もちろん正式な方法ではないようです。しかし、自分の音、自分が楽しめる音を追及した結果の荒川トゥインだったため、観客も楽しめる演奏となっています。三味線には詳しくありませんが、色んな技法があるんだなぁとちょっと関心してしまいますね。


太い棹をトゥイントゥインとこすると超気持ちいいらしいです。そんな荒川トゥイン。


こう言っちゃ何ですけど、ましろのおとはサブキャラもいい味出してますよね〜。それってとっても大切ですよね。



はたして雪にとって大会という場に出ることは良かったのか悪かったのか。どこか意図しない部分での思惑がありつつ、成長という部分で大切だったんでしょうけどね・・・。難しいところです。
団体戦にしても雪以外のメンバーの技量が高ければ優勝したかもしれません。優勝したチームは高レベルで調和の取れたチームでした。2位のチームは全員がぶつかりながらもいい音を出すチームでした。3位になった雪たちは”雪がいたから”勝っています。雪からはみ出してる実力を考えるともっと良いチームであった方が・・・と思いつつも、このチームだったからこそ出場したという反面もあるので難しいですねぇ。




何にせよとにかく面白い。この後、雪の個人演奏も控えておりかなり楽しみです。雪が大会という審査される舞台でどうなるのか。あと、この手の話に付きものである挫折的な話題。地味にまだ全く絡んできていない最上位のライバル等々。まだまだ目が離せません。