今回の四季大賞は絶対に読むべし「四季賞2011夏」



四季賞ポータブル2011夏

今回の四季賞ですが・・・近年稀に見るほど分厚いです。何回か前にはものすごく薄い時がありましたね。この全ての自由さが四季賞の良さだと思います。逆に今月号のアフタヌーンはどこか薄かったような気もしましたが・・・。



○四季大賞
四季大賞は井上文月先生の「ZNTV東京支局」が受賞。




179ページの超力作。そして圧倒的な面白さ。正直言って驚愕しました。これはすごい、本当にすごい。本誌の読みきりに載っても問題ない上に話題になってもおかしくないレベル。それが新人賞たる四季賞に出てくるとか驚きを通り越して唖然としてしまいます。
東京に隕石が落下してから18年後の世界。東京は大きな壁によって遮断され、東京には人が住んでいないと言われていたのに東京支社という謎の放送局へと左遷された主人公・芹沢。そこに広がる非日常の数々に驚きつつも、退廃した東京に暮らす人々の生き様を見せ付けられます。しかし、それまで外の世界にいた芹沢にとってはそこは知らない世界。知らされていない世界。なぜ外に知らされていないのか、そんな状況を見て自分に何ができるのか、報道のあり方等々。元テレビマンの作者の全てをぶつけた大力作です。
閉ざされた東京・・・というと四季賞っぽいなぁと思うんですが、外からもたらされる胸糞悪い事件、腐った警察、悲観し続ける子供たち、そしてテレビジャックによる外へ向けての初めての放送etc。それらを丸っと179ページに描ききっています。どのテーマを持ってきても四季大賞取れたなと思うのに、全部、全部をまとめて描いたことがすごいですね。179ページを4分割して毎回四季大賞を取れるレベルだと思っています。
井上先生はこれを描いた後どうするんだろう。全てを注ぎ込んだんじゃないか、何もかもが空っぽになっていないか、そんな心配をしてしまいます。この作品を読んだとき「強すぎる」と思いました。賞レースに対する強い弱いではなく、作品自体が強いな・・・と。力強い?強烈?もう言葉で説明できないんですが・・・強い。井上先生がこれを描いて、漫画家目指すのやめるはって言われても全然驚きません。しょうがないっす。でも、これだけの作品を描けるなら次も期待しちゃいます。
何が言いたかったのか伝えきれているのか分かりませんが、あと一言。今回の四季大賞は絶対に読むべし。





四季賞
四季賞は白川蟻ん先生の「アーチャーズ・カルテット」が受賞。




好きな女の子と初めた弓道。大きくなった頃にはヒロインの方が上手くなってしまい、ちょっと面白くない主人公。そんな主人公が上手くなりたいと願掛けを兼ねて行った山奥の弓道場で、二人の謎の青年に出会います。強くなって告白したいと願う主人公を救うべくその不思議な二人組が手伝ってくれ・・・ていたっけかなぁ?何故かその片割れと弓道勝負をしたりして、何だかんだ主人公とヒロインがくっつく物語です。
1話の恋愛ものとして、主人公が頑張って女の子に告白するも「昔っから好きだった」という流れが大好きです。まぁ、選者の谷口先生も選評を書いていましたが、弓道のみで攻めた方が面白かったかもしれませんね。ただ、作者の白川先生がどうしてもファンタジー要素を入れたかったんだろうなぁと思ってみたり。連載とは別で、自分がやりたいことを描くのって四季賞的に大切ですもんね。逆にファンタジーごり押しとか、甘酸っぱい恋愛でも勝てそうな人だなぁとも思いましたが・・・。
四季大賞がネーム力だとすると、四季賞って画力な気がする最近の四季賞。悪い意味ではないですが、四季大賞のZNTVがなくても四季賞だったんじゃないかと邪推。いつから四季大賞はアッと驚かせる設定が必要になったんでしょうね。逆に言えば、四季賞作品にあと一味付け足せれば最強の四季大賞が誕生するんでしょうけど・・・。そこが難しいんでしょうね。
とはいえ、「ずっとずっと好きだった」とヒロインが言った姿には俺の恋心も陥落してしまいました。一途な女の子大好きです。本誌でもそんな作品を描いてくれることを期待。





○特別賞
特別賞は友沢マサオ先生の「FOUR SEASONS」が受賞。




梅雨の雨傘物語、夏の甲子園物語、秋のロボット物語、冬のアイドル物語、春の高校デビュー物語。季節ごとのショートストーリーをまとめた作品です。野球部で唯一の童貞が魔球を投げるという夏の物語がアホっぽくて好きでした。最後には童貞を捨てて魔球を投げられなくなるオチまでを4ページで描くとか・・・。
どうやら元アシ&他誌での掲載手前までの実力者らしいです。四季賞という場所を新人の見本市だとするなら、5つのストーリーの中に王道ギャグ、シリアスギャグ、スポーツ描写、ラブい展開、青春もの等々。全てができるぜって出したのはいいなぁと思いました。どれをとっても一流。5つの作品の中からどれを持ってきてもロングでやれそうな期待感がいいです。というか、ストーリーものも読んでみたい!!期待してます。





今回はとにかく四季大賞のインパクトが強かったです。本誌に再掲してもいいなぁと思いましたがどうでしょう。まぁ、とにかく今回も大満足な内容でした。四季賞はその作品自体もその後の活躍も期待してしまうものです。ここからまた活躍する漫画家さんが出ることを祈ります。次回も期待。