ちょっとの勇気とおっきな友情「正義の禄号」

誰にでも納得のいかないことってありますよね。漫画を読んでいる人間にとっては最終回を迎えた時に多いでしょうか。
この終わり方で良かったの?もっと早めの終わり時があったんじゃないの?まだまだ読みたかった!なんてのは日常茶飯事です。週刊少年マガジンで連載していた「ヤンキーくんとメガネちゃん」もその1つです。




全23巻のヤンキー青春漫画の最終巻が発売されています。ヤンキーの品川と委員長キャラの足立、そこから広がっていった友情の輪がまさかあの終わり方で・・・という気持ちでいっぱいです。
品川という主人公による卒業式で1つの区切り、そして終わらない足立との物語という作者の意図は非常によく分かります。あとがきを読んでやっと理解できる終わり方でした。それでも、品川大学編はガッツリ読みたかったです。マガスペにでも読み切りやってくれませんかね??


そして、月刊少年マガジンでも連載していた「正義の禄号」の最終巻が発売されています。1巻が発売されたころからあやしいと思っていましたが、本当に2巻で終わってしまった作品です。しかし、これが面白い。本気で泣ける良作でした。



まさに「あの人のデビュー作」として長く残る作品だ。

これは帯文を書かれた沖方丁先生の一言です。もうね・・・納得せざるを得ないよ。さすが冲方先生、いいこと言います。







左:友人のショーグン/右:主人公の三義正太

引きこもり主人公の正太が、兄から託された”禄郎”というロボットと一緒に悪を倒すヒーローもの。ただし、引きこもりらしく外に出たがりません。学校にも行きません。あーだこーだ言い訳ばかりで、やる気を出しません。そんなダメダメヒーローながらも、変身に必要なやる気エネルギーを出すため、小さな勇気を振り絞ります。
1巻では最強の敵・ゼノナインがいきなり登場してきますが、ショーグンというヤンキーのおかげで追い返すことまで成功します。ここまでが1巻のお話。



引きこもりとヤンキーが友達になる―。本当にあるのかないのかよく分かりませんが、少なくとも命を懸けた戦いの中で芽生えたものがありました。引きこもりもヤンキーも学校の鼻つまみ者です。ただ、その引きこもりには人の痛みを分かってあげられる優しさがあり、ヤンキーには人を助けようと思える心がありました。



困ってる人は助ける

困っている人間がいれば助けようとする父親譲りの行動力。警察官であった父親が人のために死んでしまい、一度はヤンキーとして暴れまわった過去もあります。周囲に勘違いされることも多いですが、今ではバイトをして家庭を助けようとする立派な長男です。





正太とショーグン

結果として、正太が足を突っ込んだのを見捨てられず、自らもヒーローへと変身します。ゼノナインは強敵でしたが、この二人の力をあわせて倒せない敵なんていませんでしたよ。さすがに二人ともボロボロになってましたけどね・・・。





正太が恋した水樹ちゃん

余談ですが、ちょっとした恋愛物語もあります。1巻で正太が助けた女の子が実は同じクラスでした。引きこもりの正太が恋?と思いつつも、彼女がこの物語の超重要人物になろうとは・・・。最終回に向けてまさかまさかといったところです。そのあたりは是非読んでいただければ。ただ、普通の恋愛はしていませんよ。水樹ちゃんのおかげで正太が強くなれた〜程度で考えているなら全然違いますので。






正直言わせてもらうと終わるのが早すぎた作品です。作者の意向か編集部の意向か。それはさっぱり感じ取ることもできませんでしたが、無理矢理にでも畳み込んだ感はあります。たった2巻しか出ていません。しかし、そのたった2巻の中でビックリするほど泣かせます。

1つは正太が引きこもりだった時代から成長すること。2つはショーグンというかけがえのない親友ができたこと。この作品には「ちょっとした勇気から得られるもの」に溢れかえっています。表向きは禄郎と一緒に闘うバトルものなんですが、どうやって勝った、どうして戦うのかという部分は、根本的に登場人物たちの内面の成長によるものです。




最初の方にも書きましたが、これがデビュー作として語り継がれるのは羨ましい。少なくとも成功の部類です。だからこそ次回作が気になるところです。
もし今回のレビューで「面白そうかも?」とちょっとでも思った方へ。多分、本物はその3倍以上面白いです。・・・と、書いて作者の龍先生へのハードルを上げる。これもちょっとした勇気ですよね。