君の魂はどこにある「コラソン〜サッカー魂〜」

サッカーに興味があるかどうかは分かりませんが、是非、今の日本代表サッカーを知ってほしい。どんな選手を選ぶか、どんなシステムを選ぶか。最近盛り上がっている話題の、その大前提たる事項を一度見てほしいのです。何が足りないのか。何が良いのか悪いのか。それを「コラソン〜サッカー魂〜」で知ってほしいです。



あの悔しさを覚えているか?

主人公のリョウガは日本のサッカー界の鼻つまみ者でした。それを新しく代表監督になったヘルマンが呼び寄せ、日本代表のFWという重圧の掛かるポジションに据えます。もちろん、リョウガを日本から一度追い出した協会は面白くないですし、それを知っているメディアは面白おかしく追い立てます。しかし、FWにとって点を取ることが全てであり、周囲の雑音をねじ伏せるべく点を取り続けます。
皆さんはサッカー日本代表の思い出となるとどこまで遡るでしょうか。南アでのベスト8?ドイツでの惨敗?日韓での活躍?ドーハ?色々ありますが、コラソンに登場するキャラクターたちはまるでドイツW杯で苦渋を味わったメンバーにソックリだったりします。1−0で勝っていたのに、立て続けにオーストラリアに3点取られて無残にも散ったあの忌まわしい記憶。リョウガと共にチームを引っ張るメンバーは、その時と同じ気持ちで作中のW杯予選を戦っています。


相手は因縁のオーストラリア。




2−2でもあきらめない

リョウガの活躍で2−1となっていましたが、誤審もあり2−2の同点に追いつかれました。そこで監督ヘルマンが取った采配は、DFリーダーの醍醐(中澤がモデル?)をトップに上げるというもの。そこから予選突破に必要な勝ち点3を獲得すべく”闘い”ます。

俺たちが日韓で得た根拠のない自信を打ち砕かれたドイツW杯での大惨敗。通用するなんて幻想でした。しかし、見ていた、応援していた日本国民以上に日の丸を背負った代表は悔しかったに違いありません。作中の醍醐や中神はその当時の俺たちが体験してきた忌まわしい記憶を打ち砕くべく身体をぶつけていきます。そして得たPKでしたが・・・






PKを外すリョウガ

2得点したのはリョウガです。オーストラリアへの嫌な思い出を試合中に吹っ飛ばしてくれたのもリョウガです。こいつなら託せるとボールを渡したのは醍醐と中神。しかし、リョウガは外してしまいます。
ラフプレーばかりで仲間とも衝突ばかりのリョウガ。きっと精神的にも強いはずと思われていました。もちろん蹴るPKで外したことがないと自負するほどだったのですが、絶対に勝ちたいんだと語った醍醐たちの言葉にプレッシャーを感じたようです。悪魔だ鬼だと言われますが、リョウガも人の子でした・・・。




負けたのはリョウガのせい?

実力不足だろうが運だろうが負ける時もある。それがサッカーです。これまでの日本代表だってラッキーで勝った試合なんて数えたらキリがありません。それを実力かのように伝えている人間がどこかにいます。
試合終了後のリョウガに対するバッシングは本当に酷いものでした。「なぜリョウガにPKを蹴らした?」の大合唱。さらに、リョウガが活躍していた時はゴニョゴニョしていたのに、ミスを見つけた途端にペラペラと喋りだす協会連中。もちろん作者の塀内先生による誇張はあるかもしれませんが、実際のサッカー協会も大して変わりませんよ。俺は事実と何も変わらないなと捉えて読んでいます。
2点取ったFWがPKをミスしたから戦犯??そんなわけがありません。正直、協会とメディアのリョウガに対する反応は胸糞悪くなる描写でした。しかし、これは現実と一緒だと思っています。それを、その部分を感じ取ってほしい。昨今のサッカー日本代表で見える姿と照らし合わせてほしい。そう思います。





ヘルマンはプロですから

コラソンの最大にして最後の良心はヘルマン監督です。一番冷静に現状を把握し、人身掌握や戦術だって非常にまとも。敗戦は敗戦であると受け入れる姿勢に将来を感じさせます。もちろん理想像ではあるので、現実的にこうなれば・・・という話ではないです。



今の日本代表に足りないFWというパーツ。そして勝ちたいという魂。それをコラソンでは補完できてきたなと思う理想像を描いていますが、そこから炙り出される協会の体質と、メディアの本質を捉えようとしない姿勢。きっと塀内先生は、足りない部分を見せつつ、成長を促しているのかもしれません。
過去にサッカーを置いてきた人たちも、現在も日本代表を応援している人たちも・・・。皆さんはサッカーに対する魂をどこに置いてきたでしょうか。見つからない人も、置いてきた人も、きっとこの作品で取り戻せるはずです。サッカーに興味がある人は是非読んでほしい作品です。特にメディアさんたちはこれで勉強してほしいです。