遠い理想とヒトの謎「どうぶつの国」



読み切りガッシュが読めます

雷句誠先生が講談社に電撃移籍をしたのも今は昔。今では金色のガッシュ!!を”なぜか”講談社で文庫化しています。そして、ちょうど文庫が発売され始めの時期に別マガの読み切りとして登場したお話が「どうぶつの国」の最新刊で読めます。というか、文庫の方に収録されることはないので、ガッシュ好きはどうぶつ〜を読まなければいけません。
外伝として銘打たれていますが、内容としてはサンデー版ガッシュの後日談みたいなものです。すこ〜しだけ絵の印象が変わったかな?と思いつつも、内容は今も昔も変わりませんでした。「友」と題されているのが非常に印象的です。会えなくても近くにいる、離れていてもいつでも助け合える。そんな清麿とガッシュの熱い友情物語は続いていた。それだけでも嬉しいものです。






○タロウザが求める理想郷
悲しいときも嬉しいときも一緒に泣いてくれて、時には笑いあえる存在、それが”友達”だとガッシュは教えてくれました*1。描きたいことや伝えたいことは作品が変わっても雷句先生にとっては一緒です。別マガで連載中のどうぶつの国でもそれは変わりません。


すべての生き物が仲良く暮らす世界を夢見るタロウザ。数少ないヒト種であり、何故かほかの動物たちの鳴き声を全て聞くことができます。最初は農業を草食動物たちと始めますが、ヒトが率いる肉食動物の群れ、ヒトが操る”火”によって散り散りとなっていきます。



ヒトが住んでいた?

色々あってタロウザたちは旅をすることになりますが、旅の途中で、動物では造れないであろう建造物に出会います。既に誰も住んでいない状況ではありましたが、いくらか栄えていたのが分かります。また、滅んだということも一目瞭然でした・・・。




永遠の実

そんな旅の終わりにはクジラのエクトールに出会います。エクトールはかなりの物知りさんであり、現在のヒトの数、過去にいたヒトについて、そしてタロウザが探し求めていた”永遠の実”について知っていました。肉食だろうと草食だろうと全ての生き物が美味しく食べられる実を永遠の実と呼んでいます。仮にもし永遠の実があれば、タロウザの願う世界に一歩近づく可能性があるわけで・・・。



しかし、その永遠の実をもってしても争いが無くなることはありませんでした。それもそのはずで、肉食動物が永遠の実だけ食べるわけがありません。ただ「食べ物が1つ増えた」だけ。本能が理性に勝つことは難しいのかもしれません。食べ物で全てが解決できるほど容易い問題ではないのです。



○謎が謎を呼ぶヒトの存在
なお、エオクトールによれば、ヒトは5人いるそうです。タロウザ、カプリ、ジュウ、ギラー、そして6巻で初登場したリエム。



リエム

リエムは永遠の実を管理する少女であり、過去に現存したヒトの遺産を守っていました。エクトールによってその場所を教えてもらったタロウザが会いに行きますが、そこにはあのギラーも登場して・・・。



簡単に整理すると、草食動物と暮らすタロウザ。肉食動物と暮らすカプリ。火を操るジュウ。謎の生物と行動し、争いを引き起こすギラー。永遠の実を管理しつつ、現在最も人間に近い動物ゴリラと共に生活するリエム。
男3、女2という合コンだったら争いが起きそうな割合。さらに、争いを好まないのは、作物を育てていたタロウザとリエムのみ。この二人については東洋人ぽいですよね。カプリについても、本当は争いを好まないタイプのようなので本当は中立かな??と。問題はジュウとギラーですよねぇ・・・。特にギラーは謎の生物を率いているのが怖い。ギラーみたいな存在に限ってエクトールを殺したりしそうです・・・。

それともう一つ。滅んだと言われるヒトの文明はかなり高度です。永遠の実を作れた事実。爆弾による破壊の痕。他の動物と話せる機器。そして、現れた5人のヒト・・・。謎が多いです。特にタロウザの出生を思い出すと、捨て子であったはず。どこかの時代からやってきたとも考えられます。その場合には、他の4人も同じ境遇だったのかが気になるところ。




そんな中でも全員の共存を望むタロウザという存在は重要です。理想を追い求める姿に少なからず希望を見出せそうです。カプリという肉食獣の群れと分かり合えたこと。草食動物同士であれば種別に関係なく暮らせたこと。タロウザの存在により種別の異なる間でも会話ができたこと。それらが、いい方向に流れれば・・・と期待したいですね。
かなり壮大なテーマに挑んでいる気がしなくもないですが、ヒトという存在の謎が解明されればきっと全てが解決する???ヒトが全て出揃った今の状況がスタートです。次巻にも期待したいです。



*1:既に講談社のものなので俺でも語れる作品