これがホントの神漫画「水の森」

講談社の雑誌が非常に多くて困っています(笑顔)。ただ、その中の例えば編集部さんたちの関係とかってどうなんでしょうね。漫画家さん同士も雑誌違った場合はどうなるんでしょう?姉妹誌であれば仲はいいのかな???
例えば(週刊がきついから月刊へという意味で)姉妹誌で移動しましたというのは見かけますよね。昨年の移動で一番驚いたのはイーノで連載していた「水の森」でした。元々は月刊少年マガジンで連載していましたが、急にイーノへ移籍しています。もちろん月マガとイーノは姉妹誌です。少し・・・ペースがきつかったのかな??


月マガ時代が神漫画であっただけに、(一般的に)知名度の低いイーノが得策なのかどうなのかと心配になったものです。しかし、水の森はやっぱり神漫画でした。もし月マガ時代は読んでいたけど・・・って人がいたら絶対に今からでも読んでほしい!!月マガ時代のエネルギーを全部昇華させてます。イーノ時代を含めて水の森は完成しています。






○とある家族との出会い
全ては神に愛された聖なる少女・ジャンヌが魔女として扱われた時代から現代へやってくるところから始まります。女子高生として周囲を寄せ付けずに暮らしていましたが、出会った友人たちのおかげでジャンヌ自身にも心境の変化が訪れます。
まずジャンヌを好きになった青年の篤志が特によくしてくれました。その妹・優梨とも仲良くなりますが、そんな彼らの育ての親(叔母)が非常に重い病気に罹っていることに気づきます。ジャンヌは不思議な力を有しており、怪我を治したりもできる能力があります。そんなジャンヌが気づいた叔母さんの異変。それはジャンヌですら手の施しようがないほどで・・・。



たすけてください

優梨の大切なものを全てあげます。だから叔母さんを助けてください。そんな小さな小さな少女の願いを叶えてあげることができないジャンヌ。
本当の両親が死んで、小さかった兄妹を拾ってくれた叔母さん。悲しい毎日を過ごしていた日常を笑顔に変えてくれた叔母さん。両親という大切な肉親を亡くし、次は育ててくれた叔母さんが亡くなろうとしている・・・。そんな状況で小さな女の子が神の力に縋ろうとする姿を見てしまうと泣くしかないじゃないですか。



ジャンヌは神に自分の命をもって助けるように懇願しますが、そんな願いが聞き入れてもらえるわけもなく。とある方法で彼ら家族にとって最良の最期を作り出します。



おばちゃ・・・おかあさん!おかあさん!

今まで”おかあさん”と言えなかった優梨が、叔母さんに対してハッキリとその言葉を口にするシーンは号泣もの。
普通のやり方でこの場を創りだしてはいない・・・のですが、この過程については実際に読んで泣いてもらいたいです。神の力が万能とはいえ、死にゆく人間までは助けられません。しかし、この家族3人が本当に幸せだと言える最後を創出するために奇跡の力があるとしたら・・・本当に本当に素敵な奇跡だと思います。




○自己犠牲の少女・ジャンヌ
ジャンヌがかの神風怪盗ジャンヌダルクであるという設定は非常に重く圧し掛かっています。ジャンヌダルクが処刑されてから、今の現代までずっと無くならなかった紛争。ナントカビーイングのガン○ムをつれて来てほしいほしいレベルです。
この作品の特徴として、ジャンヌの過去を纏った大枠の話と、ジャンヌという人格が現代で出会う友人たちの物語に分かれます。



素敵な仲間たち

最初は周囲を遠ざけていましたが、”分かり合えなくても分かり合おうとすることができる”と気づきます。そこからジャンヌという一個人が現代でやれることに気づくわけですが、最初は暗い顔をしていたジャンヌが素敵な笑顔を見せてくれただけでも100点満点。




ジャンヌの笑顔

ジャンヌの笑顔は女神の笑顔。暗い顔が明るい笑顔になれたのは皆のおかげなわけです。
ただ、ジャンヌが本当に成長したなと思ったのって実は”泣き”にあると思うんですよ。誰のために泣いているのか・・・という部分なんですが、他人のために泣いていたジャンヌが、最後の最後で初めて自分のために泣きます。どちらがいいという話ではなく、そういう成長を水の森という物語は描いたわけです。




○これは神の漫画・・・
神に愛された聖女のお話・・・というわけで神漫画だなと思うわけですが、その設定を抜きにしてもすごくすごく素敵な物語でした。自分で画像を貼りながら泣いてしまう不思議。
ジャンヌを中心とした1巻から続く色んなエピソードが、最終の3巻で全て繋がります。帯文では小林有吾先生を「'10年代最注目のストーリー・テラー」だと評していますが、全くもってその通り。もちろん小林先生以上の漫画家さんがいるかもしれません。しかし、小林先生は新人であり、そんな新人さんがこれだけの泣ける物語を描いたという事実に驚愕します。これからどれだけの物語が描かれるのか・・・。それだけでも楽しみが膨らんでいきます。まずは水の森を読んで小林ワールドを体験してみてください。オススメ。