四季賞感想



2010年春四季賞

○四季大賞
「不死身屋の花音ちゃん」:曹子



何だろう・・・。とても不思議な気持ちになる漫画でした。
実際のところ不安になりました。でも、漫画自体は「楽しい」ことを主眼に置いた作品なんですよ。悲しむんじゃなく楽しもうぜって作品なんですよ。それなのにどうしてこんな気持ちに・・・。というか、むしろ作者の人はどんな心境で描いているのかが気になります。平和と楽しいと愛を4:4:2で描き続けるそうなので、今後もこのタイプの作品になるんでしょうが。

・・・・と、最初に書いてしまいましたが、さすが四季大賞なだけあっていい作品でした。いやホントにね。
作品のタイトル通り、不死身屋で働く花音という女の子が中心のお話です。不死身屋といっても人が死なないわけではなく、作中では確実に人が死んでいます。しかし、死んだ後のケアとして花音が遺族に対して悲しみを忘れさせます。そういう作品です。
悲しみを忘れさせる方法としては、死ぬ人が花音と事前打ち合わせしてちょっとしたドッキリをするんですが、これがなかなか手が込んでて面白いんですよ。死ぬ間際という逆境だからこそ楽しんだ者勝ち!って感じです。そこまでされたら残された人間も明るくなっちゃいます。
悲しみを乗り越えるのに-100から1ずつ積み上げるんじゃなく、0をかけて100足したらこんな感じになるんじゃないですかね。あぁ、そうか最初に感じた不思議な気持ちはなんぼなんでも楽しすぎるってことかな。そういう意味では作者の術中にはまったかもしれません。次の作品が楽しみです。



四季賞
「ヒーローの娘」:雨松




おおっ、本誌に読みきりで載ってても不思議じゃないレベルです。

ヒーローの娘がヒーロー・・・じゃないんですよね、この作品。ヒーローの家族が悪の親玉に殺され、そのヒーローが復讐を果たすんですけど親玉の娘をヒーローが育ててます。ありがち・・とは思いつつも、絵が上手いこともあり圧倒的に雰囲気が良かったです。自分はヒーローの娘なんだ!という誇りが一転して自分の境遇に気付き絶望するんですが、ヒーローの娘だと最後に誇るとこまでがさくっと熱く読めた作品でした。

とりあえず絵が上手いよねぇ。ちょっとクセがあるけど、アフタっぽく描いたら全然いけそうです。
作者コメントの「描くのに1ヶ月、読むのに5分だとしても100人読めば500分になるよ」という姿勢がとてつもなく好きです。俺にとってはその5分がすっげーたまらない時間なんですが、裏では相当苦労してるんだろうなぁと思ってたわけですよ。ただ、雨松先生みたいな考え方もできるなぁと鱗でした。あぁ・・・、だからこそ四季賞がもっと読まれたらいいのに。



○特別賞
「屋上友達」:松本藍




自殺しようと屋上にいた長田君の弁当を食べる藤井さん。別に藤井さんが長田君を助けようと思ったわけでもなく、ほぼ自分の食欲に忠実な藤井さんに憧れるようになった長田君の青春ストーリーなわけですよ。
正直絵とかストーリーに特筆すべきものがあったわけではないんですけど、受賞した3作品の中で連載でやったら面白そうだなと思えました。積み重ねて面白くなりそうだと感じた作品です。やっぱりギャグを前面に出したわけではない青春モノを一発でとなるとインパクトがなぁと思います。あ、そうか最後までのラヴがないのか。長田君にしてもラヴというよりはリスペクトっぽいからなぁ。せめてもう少しページを増やして・・・・と思ったら、今回の四季賞冊子が結構薄い事に気付きました。ただでさえ無料冊子なのに無駄に厚かったらこのご時勢大変だろうなぁと思っていた次第です。



今回の小冊子でVol.18になるそうです。20まで行ったら過去作品のベスト10とかやってみたいですね。