四季賞の底力を感じながら四季賞冬の感想を書く

四季賞の新シーズンが始まりました。ポータブルになってついに5年目になってきたわけですが、さすがに年4冊も出てると・・・・・多いなぁと思ってきました。普通の漫画のように終わりがないため、キリがないですよねぇ。まさかとは思いますが、CDにしてみましたとかになったりして・・・。さすがにそんなことはしませんよね?




感想の前に少しだけ。表紙がガラリとイメージが変わりました。ここまで漫画っぽい表紙になったのは初めてだと思います。そのためか右上に「本誌とセット販売してください」の文字があります。以前、コンビニで四季賞だけ単行本と一緒においてあったのを見たことがありますが、その対策でしょうか・・・。


○四季大賞
ライオン:園田ゆり




冬の四季大賞を振り返ってみると、4年前の今井哲也先生(ハックス)から、天野聡彦先生、和田依子先生、桜井画門先生と来ています。この流れから行くと、園田ゆり先生は本誌連載になるんですが・・・。はっきり言ってそれだけの実力はあるなと。どうやらかわぐち先生や編集部でも絶賛だったらしいです。四季賞自体に色ってないんですが、実に四季賞らしいといえる作品でした。



大人のために子供が生きる世界ってやっぱりおかしいと思います。子供は子供らしくというのを大人が用意してあげるのが正しい世界だなぁと改めて思いました。大人が喜ぶことを理解して行動するカラスマ君。自分の生きたいままに生きるライオン君。小学生という時期に子供持つ「理性」と「暴力性」を両極端に表現しつつも、どこかで繋がっているんだという作りがすごく良かった。面白かった。こういった作品を分かってて描いてるのか、本能で描いているのかちょっと園田先生に聞いてみたいものです。




四季賞
ちっぽけで素晴らしい日々:長谷川和志




まさかまさかのヤンキー漫画です。俗に言う不良のようなキャラクターが出てくることはあっても、これぞヤンキーものだぜって作品を四季賞に持ってくるとは思いませんでした。足りないものはたくさんあるけど、足りてるものもたくさんあるなという印象でした。問題が一つあるとすれば、この手の作品をどうやって月刊でやるか・・というところでしょうか。むしろ違った作品を読んでみたいものです。




昔ながらのヤンキー・田中虎次(通称トラ)、カジュアル型ヤンキー・沖田龍太のちっぽけな日常に、ふとやってきた転校生の原田子々。暗い性格で転校早々にクラスからもハブられてしまいますが、トラたちと一緒にご飯を食べたり、笑ったりして笑顔になっていくわけです。ちょっとした事件もありつつ、平凡なようで平凡じゃない生活を送る・・・という締めをしているんですが、まー読みやすいよ。何かどこかで見たような絵とかは抜きにしてだね。あぁ、すんません。もう一つだけ言わせてもらうと、過去話は1つでよかったような気もしたりしなかったり。それを補って読みやすさが最前面に来ているのは、担当編集さんも言ってるように練りに練っているんだろうなぁと思います。他の3作品と比べても何度も読めてしまう作品でした。




○特別賞・その1
除夜のユキ:石原雄




先に言っておくけど、この人はきっと伸びる。ベタな展開を織り交ぜているんだけど、一瞬だけすごく見てしまう作品だったわけですよ。さらに、結局はこちらの予想を外してくれたのもグッドです。あと、冬の作品だから四季賞の冬に応募したという理由がすんげー好きです。季刊賞(という言葉でいいか分かんないけど)だからこその魅力を出せたという背景がいい。それも四季賞の魅力なんだと目から鱗でした。こうやって季刊賞をうまく使うのはアリですね。



主人公のユキに毎月1日に告白してくるシュウ。毎回すぎてウザいと思いつつも、ずーっと断り続けていたせいで逆にOKを出しづらくなってる状況に。ある年、寺の跡取り娘として除夜の鐘を突き続けていたら、シュウが性懲りも無く登場してきます。しかし親友からシュウが事故で死んでしまったという連絡も回ってきます。困惑しつつも、除夜の鐘を鳴らし終わった1月1日の告白に・・・・・・。
クサレ縁の恋愛が好きです。たまらなく好きです。そういう好みの贔屓目を抜いても面白かったです。意外と連載でいいのを描くタイプだと思います。えー、ちなみにこういう感想を俺に書かれる作者さんは総じて・・・・・・・。




○特別賞・その2
世界のどこかで100m走:タヤマ碧




こう書くのもあれですが、これは恋愛ものではないねぇ。ただ、裸で走ろうって発想がいいと思いました。普段ではやれないことをするという背徳感への願望と、異常性がなかなか・・・。絵的なものを言えば、子供の伸び縮みがすごくうまいと思いました。




男の子は虫部というちょっと暗めな部活におり、女の子の方は全国にもいけるというレベルの陸上部の選手。対称的ながらも裸で走ってみたいという変な願望で意気投合します。からか裸なんて普通だぜとか言われそうですが、結局は女の子の方のみが裸で走ります。難しい年頃だったんだろうな、うん。ちょっと面白いなと思ったのは、両者共に恋愛という面があまりなく、むしろ男の子の方なんかは女の子を観察対象としてずっと見ている風ですらあるわけです。すごく面白かった!!ぶっちゃけた話をすると除夜の方が好みではありますが、このタヤマ先生も本誌に載れるレベルだと思います。






総括的な話をするとですね、改めて四季賞の懐の深さが窺えました。才能が枯渇しないってすごいよね。2009四季賞冬は当たりでした。
さて、そんな四季賞に苦言を呈したい。何かもあわせて、このまま苦言キャラでいくのも面白いなぁと思いつつ、やっぱり苦言です。というのは、編集の人の言葉っているかね?それって読者側だけでいいんじゃない?ってレベルで巻末に色々書かれてているんですが・・・。というか、ここで書きたいことと割とかぶるのが困るんだwwww助けてください。「担当編集さんと同じ気持ちです」と書かざるを得ない・・・ってそれが狙いか!?
それを踏まえても、ちょっと編集さんのコメントが入れ込みすぎなのも気になりました。そんなもんなのかな?そのせいか、かわぐち先生がすごく第3者としての目線で語ってるのが際立っていたように思います。まぁ、編集が前面に出てきても面白い作品は面白いんだと思うと、これはこれでいいのかという結論になった苦言でした。きっと今年1年はこのスタンスだろうしね〜。とりあえず2010春が待ち遠しいです。

楽屋裏 (3) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

楽屋裏 (3) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)