路地恋花はグフタの看板作品や!!・・・異論は絶対に認めない

2008年の年末に隔月雑誌として創刊されたgood!アフタヌーン(通称グフタ)の単行本がついに発売されはじめました。はっきり言ってグフタは面白い。本当に面白い。この雑誌を読んでいない人がいるとすれば非常にもったいないと思います。特にグフタの中でも「夏の前日」「こはるの日々」「サヤビト」「地獄堂霊界通信」「鉄風(来月レビュー予定)」あたりは読んどいて損はないです。あくまでここで挙げた作品は俺個人の趣味でしかありませんが、アフタ系列であることからも様々なジャンルがありますんで、きっと好きな作品が見つかる気がします。グフタはそういう雑誌です。



実は上に挙げた作品である「夏の前日」「鉄風」ともう一作品をあわせた三作品がグフタ最強のラインナップだと思っています。そのもう一つの作品というのが、麻生みこと先生の「路地恋花です。


路地恋花 1 (アフタヌーンKC)

路地恋花 1 (アフタヌーンKC)




この「路地恋花」は職人や芸術家のたまごたちが集まる京都のはずれにある長屋での物語を基本とし、自らが成すことに悩んだり苦労したりな日常を描きつつ、恋愛も絡めたショート系のお話となっています。各話ごとにその長屋の住人が出てきてお話を作るわけですが、人と人の繋がりを大切にした素敵な漫画になっています。



第1巻では「製本屋さん」「銀細工職人」「画家の卵」「小説を書くのをやめた喫茶店のマスター」「キャンドル作家」な人たちが登場。全体を通して一癖も二癖もある登場人物ばかりだったりするんですが・・・・、というか麻生みこと作品って癖が強い子ばかりですよね。路地恋花も他の作品と同様にその癖が心地よく感じられるように読めてしまいます。麻生みこと先生の作品って、キャラの一番大切な感情を一瞬だけ切り取ったような表現をしていて好きです。それでいて、止まったかと思ったら急に話を回すんですよね。その緩急のつけ方が作品を読みやすくし、さらにその一瞬の感情を際立たせているように思います。もちろん話が面白いという大前提があるからこそではありますよね。






銀細工職人の作品に守られている女の子



自分を守ってくれていた人を家の壁に描いた画家


2話目の銀細工職人さんのお話では男運のない少女に銀細工を作り続けています。新しい彼氏ができるたびに作ってあげては泣いて戻ってくる少女。半分呆れつつも大好きだったからこそ真剣に取り組んで作ってあげるわけです。最後の最後はすごくグッとくる終わり方をしていてショート作品として面白いです。「大好きだ」と思いながら新しいリングを作るところとかすごくいい。
また、3話目での画家の卵のお話では画家の卵とそれを支える女性の話になっています。自分がいなければと思っていたものの、過去の偉人たちを支えた人間のようにはなれないことに気付き、画家のもとを去っていきます。画家として生きてもらうためには自らの身を引くことが最善と知りつつも、実は自分にとってもその画家がいないとダメだったなぁと笑顔で振り返るところが素敵でした。そのあたりは是非是非買って読んでください。





ちょっと書きましたがこの作品では京都が舞台になっています。そのため登場するキャラのほとんどが京都弁(?)を話します。






いや〜、方言を話す女の子ってめちゃくちゃ可愛いですよね・・・・。この作品でいうと特に4話目に出てくるフランス人形のような容姿で京都弁を喋る子は絶対に見たほうがいいですね。純真無垢な瞳で京都弁を操るフランス人形・・・。話の始まりでは少女っぽいんですけど、ラストで色っぽさまで兼ね備えてしまって手がつけられません。路地恋花最強のヒロインです。



京都弁っていいよね!





あと、麻生先生は路地恋花という作品をやる上で一番最初に製本屋さんを選んでいます。色々と職人さんがいる中で「本を作る」ことから始めたというのがちょっと気になります。



本に触っている=幸せ


漫画を描くのと製本では職種が違いますが好きなものの対象は一緒です。そんな本に対し、「触っている(関わっている)ことが幸せ」だと書いたこの台詞は麻生みこと先生の本心を表しているのではないでしょうか。また、ここまで書けるからこそ作品が面白いんじゃないかと思います。麻生先生は漫画を描くことが好きなんでしょう。そして、そんな麻生みこと作品だからこそ読者も作品が好きになれるんでしょう。







本=中身を作った人の思いが詰まったお墓

ここで出てくるこの女性は本を製本しながら自分の作品にニヘラと笑ったり、大切な本の中身に触れて泣いたりと、本に対しての感情がハンパないです。それだけ真摯に取り組みつつ、自らの作品を作り上げる姿はどこか麻生先生の姿が重なりそうでした。まぁ、本当にそうなのかどうかは分かりませんが・・・・。ただ一つ言えるのは「路地恋花」は面白いということくらいですかねぇ。




全体的にですがやはり女性キャラがすごくいい味を出しています。例によって、男性陣のほうが振り回されています。これもまた麻生みこと先生らしさなんでしょう。帯文にもある「いっしょけんめい、恋、しよか」と女性目線で言っているこの言葉が全てを表していますね。





本当にグフタという作品にこれだけ面白い漫画を連れてきたことを今でも驚きと感謝を持って読んでいます。このシンプルでストレートな作品がグフタの良さを何倍にもしてくれています。この作品だけでグフタは成功したと言っても過言ではないなと思っています。それが麻生みことという才能です。グフタを読むなら路地恋花を要チェックですよ!!・・・・呼んでみてください。